「先にシャワーでも浴びる?」


『そう言うのいいから...』




『早く』なんて言ってホテルに着いてすぐにベッドへ移動した私達は、自分の服を脱いでいく。名前も知らないその人がTシャツを脱ぐと、綺麗な筋肉質の身体が目に移った。ああ、牧さんもきっと、これくらいの筋肉がついているんだろうな。なんて勝手に連想して、私の身体が徐々に熱くなっていく。ブラウスのボタンを外してる最中に、軽く唇が触れると、小さなリップ音が部屋に響いた。牧さんがキスをする時は、どんな風にキスをするんだろう。荒々しく、口付けるんだろうか?それとも優しく?どんどん頭の中に牧さんを映し出していって、目の前のその人が私の顔を見て小さく笑う。





「誰のこと、考えてるの?」


『...え?』




今まで誰にもそんなこと言われたことなかった私はボタンを外す手を思わず止めてしまって、少し眉を寄せながらその人を見つめた後に『一晩限りなんだし、関係ないでしょ』なんて言ってその人から目を逸らした。その人は「良いけど、名前くらい呼んで欲しいかな」なんて言って私に少しだけキスをしてから「あきらって呼んで」と、眉を寄せながら私を見つめる。




『あ、きら?』


「そ、ただのあきら」




「今日はよろしく、花子ちゃん」と、あきら、と名乗った男は笑って、私の唇を奪っていった。さっき2回触れた、ただの軽い口づけとは違う、舌が絡め合う様な深くて熱い口づけに、私の背中にゾクリと何かが走っていく。あ、この人上手い。一晩限りの人でキスが上手い人は何人かいた。だけど、こんなに頭が溶ける様な熱いキスは初めてだった。濃厚、と言うのが正しいんだろうか。あきらの溶ける様な舌の温度が、私の口内を蠢いて、私の視界が生理的な涙でじわりと滲んでいく。私の舌があきらの舌に絡めとられていのと同時に、ちゅっと小さなリップ音が私の耳に響いていった。




『なんで、名前まで...』


「社員証に書いてあったから」




「俺、結構目良いんだ」なんて続けて言って、私の首に顔を埋めていった。熱い舌がヌルリと這っていった後にちゅっと小さなリップ音が聞こえて、私は思わずあきらの肩を押す。「なに?」と顔を上げて私を見つめてくるあきらに『痕は、つけないで』なんて言ってあきらから目を逸らした。「大丈夫。舐めるだけ」と言いながらまた私の首に舌を這わせていって、脱ぎかけのブラウスのボタンを器用に外していく。本当にこの人、慣れてるし上手い。なんて思いながら、私は口から小さな甘い声を漏らした。私はあんまり前戯だとか愛撫だとかをされるのが好きじゃない。だって、一晩限りなんだから、あえてゆっくりしなくてもいいと思ってる。すぐに挿れたって別に、想い合ってるわけでもないし、お互いが傷つくわけじゃない。それになんだか主導権を握られてるみたいで...。なんて思って下唇を噛みながらあきらの肩を手で押すと、あきらは顔を上げて「どうかした?」と、困った様に笑った。私は『もう、いい。下になって』なんて私に覆いかぶさってるあきらをどかすみたいに身体を起き上がらせる。





「ん?花子ちゃんがしてくれるの?」


『ちゃん、なんて歳じゃないわ』


「そっか、じゃあ...花子?」


『名前、別に呼ばなくていいから...』




言いながら私の下に寝転んだあきらの下着をおろしていって、すでに反りたったそこに手を当てる。『準備万端って感じね』と私が小さく笑うと、「そうだけどまだ挿れないよ」なんて困った様にあきらが眉を寄せた。私はその言葉を無視するみたいに自分の下着をおろして言って、そのままあきら自身を自分の秘部に押し当てる。少し湿った私の膣内に、徐々に自身が埋まっていくと、あきらが「ちゃんと慣らさないと痛いと思うよ?」なんて言って私の腰を指でなぞっていく。私は『関係ないでしょ』と言いながら、今まで経験したことない様な大きいソレを飲み込んでいった。





「ッ...きっ、ついな...」


『あなたも、それなりに大き、い...じゃない』


「あなたじゃなくて...あきらだって」





「教えただろ」なんて言いながら腰を撫でている手が私の腰をグッと掴む。私はその手を払い除けて『私が動くから、なにもしないで』と、質量に耐えるみたいに目蓋を閉じた。牧さんも、このくらいあるんだろうか。きっと私の身体の奥まで届くくらい、大きいんだろうな。と、どんどん頭の中に思い描いていく乱れた彼が、じわりと私の中を濡らしていく。あきらの自身に馴染んだ様な膣内がピクッと動いて、私は静かに腰を動かしながらあきらのお腹に手を当てる。同時に触れた腹筋が、彼を連想させるみたいでどんどん興奮していくみたいだった。あきらは私の動きをただ見てるみたいに何も言わなくて、私は目を瞑ったまま頭の中に彼を描いていく。どんどん彼を思っていくたびに最近の彼の様子が頭に浮かんできて、私の胸がチクリと痛んでいくのと同時に、目蓋を開けた視界が私の涙で滲んでいった。彼女が、出来たんだ。私じゃない、知らない人と、彼もきっとこう言うことをしてるんだ。苦しくなっていく胸が、私は馬鹿みたいなことしてるって伝えてく頭の中が、私の心を引き裂いてくみたいに苦しくさせていって、滲んだ視界がさらに滲んでいく。溢れる涙が頬を伝っていくのと同時に、何も言わなかったあきらが不意に「今日はやめようか」なんて口を開いて、私は驚いて『え...?』と、口から小さく漏らした。





「泣いてる女性を無理に抱いたりしないよ」


『...』


「飲み直す?」


『変な人』


「そう?とりあえず...抜こうか」



そう言ってあきらが私の腰を持って、私は応えるみたいにあきら自身を抜いていく。自身が抜けるとあきらが自分の横をポンポンと叩いて「ちょっと休憩」なんて言って優しく笑った。本当、変な人。そんな事思いながら私はあきらの横に寝そべると、あきらが抱きしめるみたいに私に腕を回してくる。『なに?』と、あきらに視線を移すと、困った様に笑いながら「こうして欲しそうだったから」なんて言って私の頭をポンポンと小さく叩いた。






『こんな事して欲しくないけど』


「ふーん。じゃあ、俺がこうしたかったから」


『あっそ』






Back