Prologue


「我々は誓う。この帝都を護り切るということを。我々は我々の責務を果たすということを。我々は我々の誓いを守り切るということを」

 城門の上で翻るのは銀糸と紅の近衛軍旗。地より天を目指す陽の光が滲みかけている、夜の余韻の残る空を背にして風にはためく軍旗の下、整然と並び控える騎士たちの前、青毛の馬に騎乗し声を響かせ重厚な存在感を醸し出しているこの壮年の男こそ、近衛軍帝都駐屯部隊隊長――エセルバート・ガートナー。
 にぃ、と、ガートナーの髭の中の厚い唇が笑みの形を描く。
 朝靄に霞む遠くの山蔭はどことなく透きとおっていて、思わず目を眇めてしまうような眩い太陽がその後ろにたゆたう。張り詰めた大気の中、再び訪れる日没までの時間だけ、宵闇を駆逐する陽光がゆるやかに夜空を侵蝕し始める夜明け。薄れゆく宵闇と、あたたかなゆるやかさを取り戻しゆく静かに沈む大気。
 不敵な笑みを浮かべながら、鋭さと穏やかさとが同居している落ち着いた蒼の目で部下たちを見渡しながら、ガートナーは腰に挿した鞘から片手でゆっくりと剣を引き抜く。

「そして私は誓おう」

 厳然と大気を震わせる、頼もしく聞く者の鼓膜を震わせる、思わずぴんと背筋を伸ばしてしまうような、腹に響く張りのあるその声。

「今この時をもって、我々はこの戦いにおける勝利への端緒を、この戦いの終結への端緒を、切り開くということを!」

 晴れ渡った蒼穹はどこまでも高く、ガートナーが高く掲げた幅広の剣に、城門の上ではためく紅の軍旗の紋章を象る銀糸に、夜明けの陽光がきらびやかに反射する。

- 13 -



[] * []

bookmark
Top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -