短編 | ナノ

 終


……数日後、事件の釈明が終わってまだリンリン鳴り続ける電話にストレスが感じながら、TVをつけると、複数の出版社が大火事になった、というニュースが出ていた。

すべて俺のことを軒並み悪く書いた三流週刊誌の出版元だった。

俺はるんるん朝食を作る幸太に「……おい」と話しかける。幸太は満面の笑みを浮かべながら「なあに?」と振り向く。

「なんでもない……」

これはダメだと思った。何を聞いてものらくらりと躱されるか、問い詰めても開き直られる顔だった。


――以来、奇談作家・挟部悠一と現代の事件と結びつけることは出版界のタブーとなった。

曰く……『作家が書いた話は本当にあったことで、それを侮辱すると呪われるぞ』という戒めらしい。


……ますます俺には人が寄り付かなくなったが、相変わらず幸太だけが隣にいた。



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