短編 | ナノ

 17歳




初めて恋をした。付き合った。そして失恋した。
彼女とはたまたま委員会が一緒で、最初は地味だなと思ったけど、気配りが上手で何より本の話で盛り上がった。
周りからは焦れったいほどの距離で、付き合っていた。
清い交際。
それがいけなかったのだろうか。
ある日突然「あなたより弟さんと居る方が楽しいから別れたい」と言われてしまった。
またもや弟。
「弟……いつから知り合い?」
「…あなたと付き合い出したころから……その、二股ってわけじゃなかったの……」
最初からじゃないか。
家につれてきたこともあるけれど、話している姿は見たことがなかった。というより、俺は弟の姿を未だ認識出来ていない。
「弟…」
「それとあなた…どうして弟さんを無視するの?…まるで見えてないように扱うの、可哀想よ!」
うってかわって激しい口調で責め立てられた。戸惑いもあったけれど、14の時からこういうのが増えた。
「出来る弟を無視する兄」
どうやら弟は影のある美形らしい。
そのせいか儚げに見えるとか。
弟を見えない俺は、道端で弟に話しかけられても分からないだけなのに。
責められても仕方がないから、適当に流すことにしているが、彼女の場合……ムカムカしてつい…平手で叩いてしまった。
「ひ、ひどい…何するの!」
「あ……ごめん」
「弟さんならこんなことしない!」
見えない弟と比べられてもと思う。
「ごめん。でも二股をかけていた君に、とやかく言われたくないな」
「弟さんとはまだ付き合っていなかったわ!」
「そっか。これ、コーヒー代。じゃあね」
「ちょっと!まだ話は……」
「弟の話なんて聞きたくない。君とは別れるよ」
ムカムカイライラ……女ってどうして、こうも感情的なんだろう。もう嫌だな、誰かと付き合うって。
弟は相変わらず、見えない。





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