――そうして、迷子センターに行くと本当にショウの母親が居た。ショウとそっくりな髪色とふわふわの髪をシニヨン――ポニーテールを丸くまとめた髪型をしていた。3服装はブラウスでタレ目でメガネをかけているが、母に似た雰囲気を持つ綺麗な人だと坂城は思った。

「かーちゃん!」
「ショウ、何度走ってはいけないと言ったら分かるんだ? 小虎まで巻き込んで!」
「ごめん!あはは!」

ぎゅっと母に抱きついて笑うショウだったが、一方の小虎は泣きそうになりながら「……いない」と小さく呟いた。

「あの……すみません。小虎くんの両親は?」

見かねた秋穂がショウの母親に聞くとすぐに答えてくれた。

「実は……二人とも駅構内に居るかもしれないと、探しに行った。迷子センターで待ってればいいものを……」
「おとーさんとおかーさん……おれ、さがしてくれた?」
「もちろんだ! 虎太郎なんて大騒ぎでな、大丈夫だ」

ショウの母親は、ショウを片手で抱きながら近くに居た小虎も抱きしめた。

「寂しい思いさせて悪かった。すぐ電話して、虎太郎と美礼(みらい)さんを呼んでやるからな?」
「……っ」

小虎は髪を撫でられて、顔をくしゃりと歪ませたが泣くことはなかった。本当に偉い子だと、坂城は関心する。

「良かったですね」
「ああ」
「お二人とも、ありがとうございます。私はショウの母親で、媛路妃(ひめじきさき)だ。愚息が何か迷惑をかけなかっただろうか?」
「いえいえ……二人とも良い子でしたよ」

ショウの母親――妃にお礼を言われて、坂城と秋穂は顔を見合わせて、笑う。特別なことは何一つしていない。ただ見過ごせなかっただけで。
そこでショウが母親の服の袖を引っ張り「かーちゃん、腹減った!」と訴えた。

「お前は……少し大人しく出来ないのか! 小虎を見習え!」
「やだやだおれおなかすいたー!!! ことらもそうだよなー!」
「……ちょっとだけ」

妃を伺うように、小虎は返事をした。基本的に困らせるようなことは言わないように、遠慮しているようだ。彼女は困ったように眉尻を下げるが、すぐに坂城と秋穂を見て口を開いた。

「そうだ……お二人とも、まだ夕御飯は食べていないかな?」
「ま、まあ……日光から観光で帰ってきて終電で帰るんです」
「それならぜひ、夕御飯を奢らせてくれ。お礼だ」
「いや! そこまでのことをしてませんし……」
「おねーちゃんとごはんたべれんのー!!! やったー!」

坂城が断ろうとしたとき、ショウが大喜びで賛成した。こうなってしまっては、秋穂も坂城も断りづらい。

「……愚息がその、うるさいが、良ければ……」

妃が気まずそうに断りを入れるが、秋穂は笑顔で「大丈夫ですよ! うちは子ども好きですし、これからご飯でしたから。ね、坂城さん!」と珍しく空気を読んだ。

「ああ、お言葉に甘えていいでしょうか」
「もちろんだ!」

妃に承諾を得て、ショウは大はしゃぎ。小虎は両親がいつここに来てくれるのかそわそわと落ち着かない。それを見て秋穂は可愛いなあ、と笑う。

「本当にお前は子どもに好かれるな」
「ふふ、妬いてるんですか?」
「まさか」

秋穂の指摘に坂城はむっとするが、むっとしたということは……図星で。小虎の両親が合流して、ご飯屋さんに行くときに、ショウや小虎から秋穂を奪われないよう真っ先彼女と手を繋いだ坂城だった。





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