プルゥゥゥゥ、プルゥゥゥゥ、プルゥゥゥゥ……――それは、坂城に慌ただしい電話がかかってきたことから、始まった。
着信の相手は、彼女の澤北秋穂(さわきた あきほ)。こんな夜更け――もう 12 時だ――に珍しいと、電話を取った。

「どうした? こんな夜中に」
『あ、坂城さん!? 秋穂ですけども!明後日日暇ァ!?』
「はあ? ちょっと待ってろ」

こんな夜更けに何用かと思えば、電話口で叫ばれ、むっとするがこの少女が唐突なのはいつものことだと、携帯片手に手帳を確認する。

「明後日は何もないな……授業も休講だ」

大学三年で、普段なら授業のあるところすべて「休講」となっていた。もともと、午後の講義を 2 コマしか取っていなかったためどちらも休講となれば、大学に行く必要はなかった。明後日は一人で映画でも見に行くか、と考えていたところだった。

『マジか! よっしゃああああ!!! うちと日光に行こう!?』
「はあ!?」

なぜ日光。栃木県日光。日光東照宮で有名な日光? 坂城の頭には、有名な彫り物「見ざる、言わざる、聞かざる」が頭に浮かんだ。秋穂は坂城の反応にあんね、と続けようとしていた。









――そうだ、日光へ行こう!
〜坂城くんと秋穂ちゃんの弾丸日光旅行〜


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