02
目の前が真っ暗になった彼の視界に……一人の少女が入る。電柱に身体を隠し、頭を少しだけ出した姿は目に余る光景だった。ワンピース姿の少女は、じっと、前方の二人を見ていた。二人と付かず離れずの距離を保っている当たり……真也が声をかけようと思う動機には十分だった。


「あの、すみません」
「なんですか?」


くるっと振り向いた少女を見て平城は吹き出した。


「ぶふっ……な、なんで鼻眼鏡!?」


――少女が漫画でしか見たことがないような鼻眼鏡をかけていたからだ。少女がかけていると、アンバランスで可笑しかった。


「……? ごめんなさい、今忙しいんです。用があるなら手短にお願いできますか?」


少女は前方の二人を気にしながら事務的で淡白な声音で答える。……だが、鼻眼鏡。平城は少し遠慮がちになりながらも、また笑いを抑えつつ「っえ、えっと……君、前の二人を追いかけてる?」と聞いた。


「……そう、ですけど」


躊躇いがちに頷き、平城は「…ちょうどいい」と呟いた。


「?」
「今、二人はケーキ屋さんに入って行ったから……少し、話せない?」


前方の二人はとあるケーキ屋に消えていた。少女は少し迷う素振りを見せたあと「……分かったわ」と頷いた。


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bkm



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