06
「あーちゃん、おかえり! あのね、すーちゃんとキスしようとしてたんだよ? すーちゃん帰る間際にしかしてくれなry「静子黙れ!!」えーなんで?」
なんで妹に堂々と俺とキスしたとか言えるんだよ。アホか。お前、アホか!
「お姉ちゃんノロケないで。あと扉は閉めて。お茶置いておくから」
愛子は絶対零度の目で俺を見て、パタン、と扉を閉めた。
「……あー、嫌われた」
「あーちゃん反抗期……昔はお姉ちゃんお姉ちゃんってついて来たのに……最近構ってくれないー!」
いや、今でも相当仲良いだろ、と言いたい。静子の妹・愛子は中三で今年受験だ。さすがに、静子と遊んでいる暇もないみたいだ。顔が似ているから姉妹っていうよりも、双子みたいだ。愛子の方が無愛想だし、静子が髪を切ってしまったからもう双子とは言えないけど。
「あ、静子――夜の散歩してるか? 最近、釘バットを持った少年が出るらしいから止めとけよ」
「わあ、素敵! 会いたいな!」
「止めろって!」
無抵抗な静子が襲われたら死んでしまう。――『今度は』助けられない。
「そういえば昔、釘バット拾ったよね」
「は?」
「ほら、中三の頃すーちゃんと公園で拾ったじゃん」
「そう、だったか……?」
そんな記憶……あるような、ないような……首を傾げる俺に静子は「拾ったよー!!」と主張する。
「あれ、拾ったんだっけか……」
「でもお母さんが捨ててきなさいって言って粗大ゴミに捨てたんだよ」
「あーうん、そうだった気がする」
記憶は朧気で、靄がかかったように思い出せない。でも、そうだった、気がする。
黙って考えていると『お姉ちゃんご飯!』という声が下から聞こえた。ああ、もう帰らなきゃいけない。
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