夜を迷える子羊 | ナノ


  01


使い古されたスクールバックを背負った平野和泉(ひらのいずみ)は「なにしてんだろ」と思いながら、見知らぬ町を制服姿でふらふら歩いていた。時間は8時を過ぎる。あと2時間もすれば中学生である和泉は補導対象になってしまう。和泉は外見的には少し大人びて見えたが、それにしたって実年齢+2、3歳くらいだろう。未成年の域は超えない。


今頃、和泉は学校から帰って学童に行っている弟の迎えに行くはずだった。だが、何を思ったのだろう。和泉は学校近くのバスの停留所に止まった行く先も知れぬ、バスに飛び乗った。頭は空っぽ。ただ、「連絡が来たらうるさいな」と自然に思い、電源を切った。


少し、電源を切るのに手間取りながら。


見知らぬ町、と言っても何回か買い物に来たことがある「三桜町」だった。それでも、自分が住んでいる「鳩羽町」より複雑な地理は和泉を迷わせた。目的もなくふらふら歩く和泉は、夜の町に足を踏み入れていた。

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