越えたい背中 (1/3)


バス、と音を立てて綺麗にゴールを通ったボールが俺の足元に転がってきた。それを取り上げて顔を上げると、大好きな彼が目を瞬いた後に柔く微笑む。

「…慎一、」

「夕舞さんっ!」

低く落ち着いた声で名を呼ばれて、それだけで嬉しくて夕舞さんに駆け寄り抱き着いた。
足元に落ちて緩やかに跳ねては転がるボールを横目に、俺は一週間ぶりに触れた温もりに擦り寄る。すると呆れたように呟きを溢しながらも優しく頭を撫でてくれる夕舞さんの手。
無意識に頬を緩めてしまう。

「へへ…、夕舞さん、今日は何しますか?」

「ん…1on1、やるか?」

少し名残惜しく思いつつも夕舞さんとバスケもしたくて、体を離しながら問い掛ける。
転がったボールを拾いながら返された答えに、俺は迷うことなく頷いた。



正面から向けられる視線をドリブルしながら見返し続けて、長い時間が経った気もする…実際には、数分と経っていない筈だけれど。
夕舞さんの背後にあるゴールへ向かいたくても、隙がない、隙を見せない。は、と短く息を吐きながら、互いに隙を窺う。

「…っ、」

不意に一瞬、夕舞さんの視線が外れたのを俺は見逃さなかった。
すぐに右へと動けば、次いで一歩遅れて動く夕舞さんを視界の端に捉えつつ即座に左からゴールへと回る。
そして軽く溜めてからシュートを打つ。

──…入れ!

「…ッさせるか!」

バシッ、



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