たまの笑顔に絆される

※泉と阿部の話






阿部うっぜぇ。


三橋に対しての阿部の接し方というか過保護さというか諸々がうざい。
三橋も三橋でそんな阿部の言動に満更でもないむしろ喜んでるとこがうざい。
三橋お前はもっと阿部と対等になるべきだ。阿部はえばってる。



昼休み。
放課後の練習メニューの打ち合わせで9組にやってきた阿部と相槌を打ちながら話を聞いている三橋を見ながら俺はパックのジュースのストローを噛んだ。
俺の中に溜まっていくイライラを表すようにギリギリとストローを噛んでいると近くの席に座っていた浜田が「そんなに噛んでるとそのうち噛み切れんぞ」と苦笑いする。

「泉はなにをそんなにイラついてんのよ」

そんな浜田の問いを黙殺する。
シカトはやめろよと声が上がるがまた黙殺。
すると弁当を食い終わってから机に突っ伏して寝ていた田島がガバッと上体を起こして「泉はさ!」と声を上げる。

「た、田島いつから起きてたんだよぉ!まじびびった俺寿命縮んだよ今!」

いきなり起きた田島にびびる浜田は黙殺する。
浜田にわりーわりーと笑いながら謝り、「でさぁ泉はさぁ、」と田島は続ける。

「泉はさぁ世話焼きだよな!特に阿部相手だと!」

でかい声で元気よくそう言った田島に俺だけでなく浜田も「はぁ?」と首を傾げた。

「俺のどこが世話焼きだっつか特に阿部相手にってなんだよ?」

阿部をうざいと思ったことは多々あるが世話を焼いた覚えはない。
田島は問題の正解を知っているような得意気な顔でにんまりと笑った。

「泉ってよく周り見てんじゃん。そんでいろいろしてくれんだろ!」

浜田が「いろいろしてもらってんのは主に三橋とお前だろぉ」と口を挟む。

「そうだけどさ!泉って野球部でどっか座るときよく阿部の隣座んだろ?そんで阿部がグルグルしてるときとかぼーっとしてるときとか話し掛けてやってんの」

周りをよく見てんのは実はお前の方だろと思いつつ、俺ってそんなに阿部の隣に座ってたか?と思い返してみる。…あんま意識したことねぇけど確かにそんなような気もした。
 うぜぇうぜぇと思いながらあのめんどくせー阿部を無意識にかまってたというのか俺は。嘘だろ。
いや、別に俺は阿部が嫌いなわけじゃない。
三橋に対しての態度は本当にうぜぇと思っててそれに萎縮する三橋にもイラついてるが、阿部はいつも野球に真剣だし捕手としても頼りになる。
普通に接する分には特に問題ない。でもやっぱりうざい。

「阿部の三橋へのあれはさ、皆はスルーしてっけど泉はいちいち文句言うもんな」

その分皆より世話焼いてるってことじゃん、と言ってニカッと笑った田島はまた机に突っ伏しその直後いびきをかいて寝始めた。
お前の寝入りはのび太並みか。
世話焼きってのは俺より花井とか栄口のことだろ?


阿部との話が終わったのか席に戻ってきた三橋と目が合う。

「三橋は、阿部のことうぜーと思わないのか」

三橋はキョロキョロと視線をさまよわせたあとフヒッと笑い「おっおれ、大事にされてるん、だ!」と鼻息を荒くした。
…それは阿部に不満はないってことか。





放課後。
バッティング練習をしていると珍しく阿部が近づいてきた。

「泉それ何キロ?」
「140キロ」

バッティングフォームやらマシーンやら次の練習試合の打順やらの話をする。
こうやって普通に話してやれば三橋だってびびんねーんじゃねぇの。


「お前、前より長打力ついたよな。次の試合も期待してんよ」

ニッと笑う阿部に面食らった。思わず緩みそうになる口元をひきつらせながら阿部のケツを叩く。

「任せろよ。てか上から目線うっぜ!」
「おー頼むぜ」

手をひらひらさせながら俺に背を向けてベンチに歩いていく阿部を見ながら、ニヤニヤするきもちわりー口元を手で隠す。
野球命で自分にも他人にも厳しいあいつに褒められっと悪い気しねぇ。
三橋へのあれだって三橋を勝たせてやりたいって気持ちの表れなんだろうということもわかってる。
三橋も実際あんなんだし、俺が口出しすることでもねぇのかな、




「あっ三橋ィー!そういうことすんなっつってんだろーがッッ!!?」





前言撤回。
やっぱり阿部うっぜぇ!












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泉はよく阿部くんの隣に座るよねってはなし

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