いま、笑って祝福を[4]結局その夜、こいつらの質問攻めにナマエは一言も明確な答えを返さなかった。
ほとんどを、内緒、の一言と笑顔で切り抜けた。
そんなこいつを見ていると、とある一つの可能性を考えたくなる。
もしかしてこいつがはぐらかすのは、その相手がこの中にいるからではないだろうか、と。
そうでなけりゃ、こいつが俺たち相手に隠し事をする理由がない。
だとしたら。
「おい、斎藤」
そうだとしたら。
最後の賭けに出るのも、悪くねえんじゃねえかって。
「お前、ナマエを送ってってやれ」
すっかりしょげ返った斎藤の背中を、思い切り押してやる。
俺の勘が当たってるかどうかは分からない。
外れてるかもしれない。
だがどちらにせよ、ここで勝負に出ないことには始まらない。
「んじゃ、頼んだぜ」
斎藤が俺の言うことに逆らわないのは分かってる。
少々手荒なやり方だが、止むを得ない。
男なら、ここぞと言う時に討って出るべきだ。
ナマエの思う相手が、誰であったとしても。
黙って指咥えて見てるような、情けない男は論外だろう。
さあこの馬鹿女を、落として来い。
俺が、斎藤とナマエが付き合うことになったと聞くのは、その次の金曜日のことだった。
ほら見ろ、どうせそんなことだと思ったぜ。
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