いま、笑って祝福を[3]
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「んで、あっちでイイ男は見つかったのか?」

斎藤に任せておいたら、こいつはいつまで経っても先には進めないだろうから。
ちょっと背中を押すつもりで、小さな爆弾を落としてみる。
案の定斎藤は目に見えて顔色を変え、焦ったようにナマエを見た。
原田や総司なんかは、俺の意図に気付いてニヤニヤ笑ってやがる。

「まっさかあ。確かにイギリス人って、ちょっと憧れるけどね」

景気良くビールを飲んでいたナマエの台詞に、斎藤は複雑な表情だ。
男が出来ていないことに安堵する反面、憧れる、なんて単語に焦ってやがる。
そうやって、もっと焦った方がいいんだ。
いつまでもナマエが、俺たちと一緒に馬鹿をやって笑ってると思わない方がいい。
ほっときゃこいつだって、俺たちの知らないところで男を作ってどっかに行っちまうんだ。

なんて考えていた矢先のことだった。

「それに私、好きな人いるし」

俺のお節介なんて比にならないほどの爆弾発言に、場が静まり返った。
平助や新八が目を剥き、割と何事にも動じない総司や原田ですら亜然としている。
斎藤に至っては、茫然自失で手にしたジョッキからビールを零す始末だ。

「まあ、あんまり叶いそうにないんだけどね」

当の本人だけが、あっけらかんとした口調でそう言って、ジョッキのビールを飲み干した。
そんな話は初耳だ。
ここにいる全員が知らなかったに違いない。
いつの間に、こいつは好きな男なんて見つけたのか。

「なんだよそれー!誰だれ?」
「聞いてねえぞそんなの!」

ようやく我に返った面々が、ナマエを質問攻めにする。
しかしナマエは笑うばかりで、何も答えなかった。
ちらりと斎藤の方を窺えば、もう可哀想なほど顔面蒼白になってやがる。
とりあえず零したビールを拭かせようとおしぼりを投げてみたが、まるで気付きやしない。

斎藤がナマエに片想いを始めてから、もうかれこれ7年くらいか。
その結末がこれじゃあ浮かばれない。


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