いま、笑って祝福を[1]
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「お、今日は割と揃ってんじゃねえか」

金曜日、午後7時50分。
建て付けの悪い引き戸を開けて馴染みの店に顔を出せば、これまた馴染みの顔ぶれが揃っていた。

「あっれえ、土方さんじゃないですか。何で来たんですかー?」
「うるせえよ総司」

いつも通り突っかかってくるこいつを適当にあしらいながら、店の中に足を踏み入れる。
こぢんまりとした、こう言っちゃなんだがみすぼらしい店だ。
いつ来ても俺たち以外に客がいない。
そもそも、従業員もいない。
いるのは、店長だってえのに客よりも先に酔っ払う馬鹿な新八だけだ。

「遅かったじゃねえか土方さん、女か?」

カウンターで飲んでいるのは原田だ。
全く、どいつもこいつも好き勝手言いやがる。

「うるせえんだよ。いいもん拾って来てやったってえのに」

そう言って、ニヤリと笑ってみせれば。
俺の登場に律儀に立ち上がった斎藤の顔が、ぴくりと反応した。
自然と、全員の視線が俺の背後に移る。
半歩ずれてやれば、大袈裟な歓声が上がった。

「えへへー、久しぶりーっ」

へらり、と笑ったのは。
俺たちにとって、特別な、特別な女。
俺が思うに、総司にとっては幼馴染みで、平助にとっては女友達で、新八や原田にとっては妹で。

「…ナマエ、」

斎藤にとっては、想い人。

「なんだなんだ、いつ帰って来てたんだよ?」
「土産は?土産!イギリスだろ?」
「お前らいいから、とりあえず座らせてやれよ」
「ほらナマエ、こっち来いこっち来い」

あれよあれよと言う間に取り囲まれ、気がつけばバッグもコートも取り上げられたナマエが総司と原田の間に挟まれて座っている。
ナマエの真向かいには平助、その隣りに斎藤。
新八はナマエと俺の飲み物を用意しに行っている。

「ナマエ、ビールでいいか?」
「もちろーん」
「土方さんは?」
「ウーロン茶」

俺もコートを脱いで、平助の隣りに腰を下ろした。

「んじゃあ、ナマエちゃんおかえりー!かんぱーい!」

新八の適当な音頭で、俺たちの長い夜は始まった。


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