「 第10話 拷問 」

 それは唐突だった。
 名門の全寮制男子校に通う青年内海裕也は、己の優秀な頭を以てしても理解不能な事態に、また巻き込まれていた。

 ――助けてやって、連行かよ! 全く、鬼のような親だな。
 裕也は内心舌打ちしたい気分だった。


第10話 拷問


 真っ赤な夕焼けの中。
 アカデミーからの帰路の途中、裕也は、一度感じたことのある気配に気づいた。
 ――昼間に、アカデミーの屋上で感じた気配だ。
 あの、おれが、嘔吐感のせいで話しかけられなかった少年(参照)じゃないか。
 そんなことを思いながら、あの時できなかった挨拶でもしようと、気配のする方向へ歩いて行ったら。


 それを見た瞬間の、裕也の行動は速かった。
 屋上で見た黒髪の少年が、脚を貫かれていた。
 ――ガキ一人に対し大人三人がかりかよ。ったく、やれやれ、この世界の大人は汚い奴が多いぜ。
 風のように突っ込んでゆき、裕也は男から刃物を奪った。
 少年を守りながら、大人三人を相手した。少年へ向けられた攻撃も全て弾き返し、数分で三人とも沈めた。狭い路地だったからやりづらかったが、逆に忍術を使われなかったのはラッキーだった。(忍術を使われたら一般人の裕也には勝ち目はないだろう。)
 そうして、気絶している少年の脚の応急処置をし、担ぎ上げ、道行く人に尋ねながら(「すみません、この背中の男の子の家、教えてくれませんか?(ニコッ)」)、奈良家まで連れて行ったのだ。その道中で、少年の名前が奈良シカマルということも知った。
 意識を完全に失っている人間の体は、少年とはいえ、とても重かった。とくに裕也はトリップして体が小さくなったうえに女になってしまったので、元の男の17歳のときよりだいぶ非力になっていた。それでも普通の人間よりはあるつもりだが。

 奈良家で最初に出てきたのは、シカマルをそのままオジサンにしたような容貌の男、奈良シカクだった。
 彼は息子の状態を一目見ただけですべての状況を把握したらく、裕也は「息子が世話になったようだな。ありがとう」と礼を言われた。


 しかし。

「どーしてこうなっちゃうんでしょうかねぇ?」

 ヘラっと笑った裕也は、イビキという名の尋問官によりまた腕を裂かれた。
 裕也は現在、尋問という名の拷問中だった。
 戸籍がないことはばれてはいけないと注意していたのに、最悪の形でバレてしまった。
 シカマルを襲った連中と一緒に、里の最高権力者らしい火影様とやら(ようやく正体がわかったぜ)のおわします建物に連れて行かれた。しかし火影本人は留守らしく、火影代理人(?)の指示により、不審者裕也はそのまま地下の尋問室に連れて行かれた。冷えた空気。乾いた血の臭い。パッと見は、石造りの地下牢。壁には磔用の道具やら拷問椅子やらアイアンメイデンやら何でもござれの状態だった。

PageTop

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -