「 夢の中で1 」

 頭に直接響くような、少年の声。
 よく聞こえないが、切羽詰まったような。

「里を、ナ――を、頼む。」

 そんな声で目を覚ますと、
 そこは不思議な空間だった。

 裕也は浮いていた。というか、大きな穴を上がっていた。
 声がしたほうへ、つまり下の方へ眼をやると、黒髪の少年が落ちていくのが小さく見えた。顔は見えないままにもう視界から消えた。その下は、底無しの穴。底が見えない。


 深夜。
 ひたすら浮遊してゆく、変な夢。
 底無しの大きな穴を、ひたすら上がっていく夢。

 裕也の周りは逆に、家具や建物、木々やなにかの欠片、そして人間まで、次々と落下してゆく。
 みんな落ちてゆくのに、裕也だけ上がっていく。

 色んな人とすれ違った。
 オバさん、オジさん、子ども、きれいなお姉さん、赤ちゃん。色んな人。
 でも、みんな寝ているようで、無言で落ちていく。
 本当にたくさんの人とすれ違ったが、声をかけられたのは最初だけ。あの黒髪の少年だけだった。


 最初は物珍しさに飽きなかったが、いい加減そろそろ飽きてきた。
 ――この夢、さっさと覚めないかなー。
 そんなことを考えていると。

 上から、鮮烈な金色。

 見上げると、ひとりの少年が落ちてくる。

 他の人はただ落ちるだけだが、その少年は、なんだか強烈に裕也の興味を引いた。他の人と違って見える。きれいだ。
 水の中を泳ぐように裕也は動き、その金色の少年を受け止める体勢に入る。

 裕也の目算通りに少年は裕也の腕の中にすっぽりハマる。見た目よりも軽い。
 高校生の裕也よりも5歳ほど年下だと思われるその少年は、柔らかい金糸を揺らし、すやすやと眠っている。頬には三本の引っかき傷。服は黒を基調とした、体のラインのよくわかるタイトな服に、白のベストのようなもの。そして、左肩には炎を模る刺青。

 ――なんか、忍者みたいな服装だな…。歳に似合わず。

 んでもって、コイツ自身のものではないらしいが、血がたくさん付着している。返り血か? ぶっそうだな…、いったい何なんだ…?

 そんなことを思いながら、おもむろに、少年の髪に手をのばし、透く。ほこりか乾いた血が付着しているようで、簡単には指は通らなかった。

 次の瞬間。

 バッ!

 彼が目を開いた。

 強烈な青。
 金色の髪、底無しの青の瞳。

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