「 2 」

 ナルトの顔が嫌悪に歪んだ。青色の玲瓏たる瞳が絶望に濁った。

「フン、あんたも結局里の奴らと一緒だったのさ。嘘つきだ。なにが『ずっと守ってやる』だ。ずっと、だって? あの台詞から1年も経っちゃいないのに、これだ。結局あんたはおれを捨てて手の届かないところに行ってしまうんだ。里の奴らは最初からおれを迫害してきたが、期待させて落とすあんたは里の奴らよりたちが悪い。最低だ

「うずまき…」

「触るな!」

 手を振り払った。「おれはやはりお前が嫌いだ。最初から最後まで嫌いだった。」


 彼の表情が削ぎ落とされていく。

 信じていた人に裏切られた。

 幼き頃からの唯一の理解者であり保護者だった三代目を失い、さらに信じてた裕也にも裏切られ、ナルトの精神は壊れた。
 自分と"人間らしさ"を繋いでいた最後の糸が、ぷっつんと切れてしまったようだ。
 感情が死んでゆく。
 世界から色が死に、視界が白黒になる。
 暗部の任務時の、怜悧で冷酷な冷たい顔。

 目の前の、甘くて優しくて柔らかな顔が、一気に汚いもののように感じられていく。自分を迫害する、排除すべき対象。
 それまで大切にしていたものが、突然どうでもよくなり、ゴミ箱に捨てるような。

 感情無しに、自分の両手が素早く印を組んでゆく。
 常人には目視することもできないスピードで、術を組んでいく。非常に威力の高い火遁の術。

「火遁・火龍炎弾、」

 三代目が最期の闘いで使用した術だった。

 その場が一気に熱気に包まれる。空気が熱くなる。

 裕也の前に、龍の姿をした炎が現れた。

 彼の体の10倍はありそうなほど巨大で強大な龍。

 裕也の目が見開かれる。

 火が龍の如く裕也を襲う。
 炎はチャクラで操られているため、忍びでも避けるのは困難とされる。だから裕也は(多少戦闘はできるみたいだが)一般人なので避けるのは有り得ない。


 ――終わりだ。内海裕也。


 心の奥底がチクリと痛んだような気がしたが、ナルトは無視した。

 大切にしていた少年が炎に食われ、火葬されてゆくのを、ナルトは黙って見ていた。

 ナルトの術によって現れた龍は、通常よりも大きなサイズだった。
 これは、彼の絶望の大きさ、感情の揺れの大きさを表していた。

 裕也は、ナルトの絶望の炎に、飲みこまれたのだ。




 ――じゃあな、裕也。



 いまだに勢いの死なぬ轟々たる炎へ向かい、自分が殺した少年に、静かに声をかける。

 生きているように唸る龍を静かに見つめながら、

 ぽろりと、
 心の奥底からの声が、こぼれた。



「本当は、お前が好きだった」

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