「 エピローグa 」

 里を一望できる火影岩の上に、二つ目の影が舞い降りた。
 着地時の足音を一切立てずに降り立ったのが、金色の髪の少年、うずまきナルト。
 強い風を受けながら、彼は茶色の少年の前に立ちはだかった。

「なぁ、裕也。お前には言いたいことがたくさんあるぞ」

 弧を描く唇は艶やかだったが、細められた目は笑ってはいない。

 いっそ凄絶なほどの美しい顔を見て、裕也は「そいつは…まいったぜ、はっはっは」と力の無い笑みを浮かべた。




エピローグa





 風にさらわれる茶色の髪を、裕也は耳にかける。
「ところで、こんなところで会うなんて、奇遇だな。あんたは三代目火影の葬式に出なくていいのかよ。なついてただろ?」
「出るつもりだが、お前と一緒に出る」
「いやだな、あんたは便所にも友達と一緒にじゃないと行けないような女子かよ。ひとりで行け」
「断る。」少年は強く言い放った。

 喪に服し全体が黒色に包まれる里の上で、ふたりの視線がぶつかりあう。
 どちらも譲れぬ、強い視線。
 湿気を大量に孕んだ風がふたりの間を抜けてゆく。

 ふと、裕也は足元の里へ視線を移した。
 木の葉崩しに遭い、ボロボロになった里。あちこちが破壊され、人もたくさん死に、建物は大半が倒壊した。物理的なダメージだけでなく、人々の精神的な面でも、里のリーダー火影が死んだというのが大きい。
 物理的にも、精神的にも、里は大き過ぎるダメージを受けた。
「里は…一度、枯れた」
 静かに話す。「しかし、木の葉の里はまた芽吹き、再度大きな花を咲かせるだろう…。この里は、強い。」視線をナルトに戻す。綺麗な青の瞳を見据える。「あんたに支えられているこの里は、強い」

 ハッ、と、ナルトは鼻で嗤った。唾棄するように言う。
「おれは里なんかどうでもいい。なんなら今ここでトドメを刺してやってもいい。三代目亡き今、おれにとってこの里はゴミでしかない」
 吐き捨てるように言われたその台詞は、おそらく彼の本心だろう。
 たしかに、彼にここまで言わせることのことを、この里はしてきた。
 里の脅威であった九尾を封じる器となってもらった上に、九尾事件の心の傷を受けてもらうサンドバッグにもなってもらっていた。人々は、ナルトを迫害することで、九尾事件の深いストレスを転嫁できていたのだ。

 名実ともに、彼は里の生贄だった。

 そのことを考え、心がまた痛んだが、それを隠すように、ゆっくりと、裕也は優しく微笑んだ。
「…うずまき、」
 甘い声で少年を呼び、一歩近づき、彼の腕をつかむ。
 ナルトは抵抗しなかった。
 笑みを浮かべたまま、言い聞かせるように、言葉を紡ぐ。
「うずまき。おれはしばらく、遠くに行く」
「行くな」
「行かなきゃいけないんだ」

「…元の世界に、帰るのか、」震える声。



 静かに答える。
 ボロボロの体全身から聞こえる悲鳴を隠すように、ポーカーフェイスで。

「…ああ。そうだ」

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