「 5 」

 授業終了、下校時間の合図があり、一気に教室が騒がしくなった。
 イルカも教科書などの類をトントンと教卓で揃えていた。質問に来る生徒もいないし、早めに職員室へ行っていようか。あ、いや、その前にシカマルを探して捕まえて叱ってやらないと…。

 その時、がやがやと私語につつまれる教室の中で、ひときわ大きな声がその場にいた全員の鼓膜を貫いた。
「あーーー! 見て見て! 外にめっちゃカッコイイ人がいる!!!!」
 大きな声に思わず耳を押さえたイルカも、口では「こら、静かにしなさい」と言いつつ、皆と同じように興味を持って窓を覗きこんだ。
 
 ほとんど叫び声に近い声が占める教室。「えー、どこどこー?」「ほら、あそこあそこ! あの壁に凭れかかってる、茶髪の人!」「ああ、あれ、女じゃね?」「ばっか、どう見ても男の子でしょ! 嫉妬するからって勝手に女にしないでよね!」「嫉妬とかできる次元じゃねぇだろあれは…」

 黄色い声の飛び交う教室で、イルカも注意しながら姿を探した。
 こんなに皆を騒がせるほどのルックスに対する純粋な興味もあったし、それに、もし来訪者だったら教員が対応しなければならない。
 女子生徒の指し示す指の先をたどり、イルカもその姿を見つけた。
 ――ああ、あれか、
 たしかに、遠目ではあるが、整っているのが分かる。オーラが違う。その辺の一般人が遠くにいても何も思わないが、彼は何か特別なオーラを持っていた。どこかの名家の人間だろうか?

 でも、見たことない人間だ。

 イルカは声を張った。
「まぁ無いとは思うけど、もしかしたら侵入者かもしれない、っていう可能性もあるから、まず俺が行く! お前らは勝手に近づくなよ! いいな!」
 ええ〜という不満たらたらの声を背に、イルカは教室を出、階段を駆け降りた。
 本当は窓から飛び出ても良かったのだが、生徒が真似しかねないし、それに外の彼が危なそうな雰囲気ではなかったので、そこまで緊急のことではないと判断した。

 急いで校舎から出て、イルカは、彼のもとへ駆けた。

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