「 2 」
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俺は奈良シカマルという拈りの欠片もない名前の男だ。
歳は途中から数えるのが面倒臭くなったので曖昧だが、多分11か12だ。多分。
趣味は雲を眺めること。特技は碁などの頭脳戦。しかしこれもまた頭を使うのが面倒なので、あまり頭を使ったことはない。俺の場合、殆ど何も考えなくとも日常生活に支障はない。惰性で生き、有象無象のしょうもない意見に付和雷同し、何にも縛られない雲に憧れる。
俺は傍観者だ。
俺はこの何の変化も無い閉鎖的な里に辟易しているが、だからといって大きな変化を期待しているわけでもない。面倒だから。
だから以前にうずまきナルトが机の下で印を組み 分身と入れ代わったのを目撃してから、よく彼を目で追うようにはなったが、コンタクトは取らない。気軽に肩を叩いて『よぉ、おまえ、よく授業サボって何やってるんだ』なんて聞いてしまった日には、面倒なことに巻き込まれるのが関の山。俺は見るだけがいいんだ。観察し、適当に考察する。
しかし俺は確実に、刺激に餓えていた。
うずまきナルトのように底無しの危険を孕むような物騒な刺激ではなく、ただ純粋に好奇心だけを満たしてくれるような、リスクのない刺激。そんな都合のよいものなどあるはずがないとは頭では分かっていても、しょせん俺も餓鬼だから、渇望してしまう。
「メンドクセー」
口癖が出た。
頬杖をつき、窓の外を眺める。雲が平和に流れてゆく。気楽で羨ましい。
そんなことを徒然と考えていたら、頭に何かを投げ付けられた。「いってぇ」と頭をおさえる。チョークの欠片が床に落下した。
あーそういえば今アカデミーで俺は授業を受けているんだった。
面倒臭そうに黒板に視線を戻すと、イルカ先生と目が合った。奴は怒っていた。チョークを生徒の頭に投げ飛ばすくらいに怒っていた。肩をわなわなと震わせている。……あんなに興奮するなんて、奴も面倒臭い生き方をするものだ。
全く反省のけを見せない俺に、イルカ先生は怒鳴った。
「おまえ、授業聞いてなかっただろ!」
こんな初歩的な内容を、いまさら聞く必要がありませんから。
とは、もちろん言わない。面倒臭いことになるからだ。さらに面倒なことに、彼の質問には、肯定も否定も許されない。黙るしかない。いや、黙秘も許されないか。全くやっかいな人間だ。
仕方ないので俺は怠そうに「雲を見ていました」と正直に答えた。これは奴の逆鱗に触れたようで、途端に「廊下に立っていろ!」と怒鳴られた。直情的かつ短絡的かつ単純な人間だ。
黙って立ち上がると、誰かに横から袖を引かれた。金髪の少年、うずまきナルト。
「へっへーん! いい気味だってばよ! いつも窓際の席を占領するバチがあたったんだってば!」
悪戯げな笑みを模るその顔。じつは目は全く笑っていないことに最近気付いた。しかしだからといって彼にそのことを言及するつもりはない。気付いた素振りさえ見せない。
「おまえと話すのが一番メンドクセーんだよ……」
はぁ、とため息をつきながら言うと、彼は一瞬自嘲ぎみの笑みを浮かべた。しかしすぐに「なんだとー!?」と逆上してくる。
――もうホントお前メンドクセーよ。
二度目のため息をついた。
_____
このままシカナルに突入しても萌えるが、やはり鹿様には主人公に興味をもってもらわねば
俺は奈良シカマルという拈りの欠片もない名前の男だ。
歳は途中から数えるのが面倒臭くなったので曖昧だが、多分11か12だ。多分。
趣味は雲を眺めること。特技は碁などの頭脳戦。しかしこれもまた頭を使うのが面倒なので、あまり頭を使ったことはない。俺の場合、殆ど何も考えなくとも日常生活に支障はない。惰性で生き、有象無象のしょうもない意見に付和雷同し、何にも縛られない雲に憧れる。
俺は傍観者だ。
俺はこの何の変化も無い閉鎖的な里に辟易しているが、だからといって大きな変化を期待しているわけでもない。面倒だから。
だから以前にうずまきナルトが机の下で印を組み 分身と入れ代わったのを目撃してから、よく彼を目で追うようにはなったが、コンタクトは取らない。気軽に肩を叩いて『よぉ、おまえ、よく授業サボって何やってるんだ』なんて聞いてしまった日には、面倒なことに巻き込まれるのが関の山。俺は見るだけがいいんだ。観察し、適当に考察する。
しかし俺は確実に、刺激に餓えていた。
うずまきナルトのように底無しの危険を孕むような物騒な刺激ではなく、ただ純粋に好奇心だけを満たしてくれるような、リスクのない刺激。そんな都合のよいものなどあるはずがないとは頭では分かっていても、しょせん俺も餓鬼だから、渇望してしまう。
「メンドクセー」
口癖が出た。
頬杖をつき、窓の外を眺める。雲が平和に流れてゆく。気楽で羨ましい。
そんなことを徒然と考えていたら、頭に何かを投げ付けられた。「いってぇ」と頭をおさえる。チョークの欠片が床に落下した。
あーそういえば今アカデミーで俺は授業を受けているんだった。
面倒臭そうに黒板に視線を戻すと、イルカ先生と目が合った。奴は怒っていた。チョークを生徒の頭に投げ飛ばすくらいに怒っていた。肩をわなわなと震わせている。……あんなに興奮するなんて、奴も面倒臭い生き方をするものだ。
全く反省のけを見せない俺に、イルカ先生は怒鳴った。
「おまえ、授業聞いてなかっただろ!」
こんな初歩的な内容を、いまさら聞く必要がありませんから。
とは、もちろん言わない。面倒臭いことになるからだ。さらに面倒なことに、彼の質問には、肯定も否定も許されない。黙るしかない。いや、黙秘も許されないか。全くやっかいな人間だ。
仕方ないので俺は怠そうに「雲を見ていました」と正直に答えた。これは奴の逆鱗に触れたようで、途端に「廊下に立っていろ!」と怒鳴られた。直情的かつ短絡的かつ単純な人間だ。
黙って立ち上がると、誰かに横から袖を引かれた。金髪の少年、うずまきナルト。
「へっへーん! いい気味だってばよ! いつも窓際の席を占領するバチがあたったんだってば!」
悪戯げな笑みを模るその顔。じつは目は全く笑っていないことに最近気付いた。しかしだからといって彼にそのことを言及するつもりはない。気付いた素振りさえ見せない。
「おまえと話すのが一番メンドクセーんだよ……」
はぁ、とため息をつきながら言うと、彼は一瞬自嘲ぎみの笑みを浮かべた。しかしすぐに「なんだとー!?」と逆上してくる。
――もうホントお前メンドクセーよ。
二度目のため息をついた。
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このままシカナルに突入しても萌えるが、やはり鹿様には主人公に興味をもってもらわねば