「 2 」

 ナルトは瞠目し、少し遅れてやっと「は?」と声を出す。
 裕也は目を細める。


「俺の頭の中は、あんたのことで一杯だ」


 そう甘く言い、笑みを深める。大きな桜のつぼみがほころぶような、温雅で柔らかな笑み。優しさに満ちた笑み。
 それをマトモに見てしまったナルトは頬が赤らむのを感じたが、すぐさま裕也の言葉を咀嚼する。『あんたの下らない芝居』。キョトンとした顔を作り、裕也を上目で窺う。


「なんのことだってばよ」

「強情だな。もう諦めな。ゲームオーバーだ、狐空」

「こ、こくう? 誰」

「いい加減にしないと、俺、怒るからね。ただでさえ、商店街でのあんたの態度に腹立ててたんだから。自分から石や花瓶に当たるような馬鹿なことを。もしかして、あんた、マゾ?」

「ばっ、ちっげーよ。何言ってんだってば!」


 わめくナルト。
 箸を手慰みに回す裕也は、ニヤニヤしながら見る。しかし内心は冷え切っていた。
 ――まだ、だめか。まったく、腹が立つぜ。俺がここまでやって落ちなかったガキはいないのに。

 黒いことを思いながら「ご馳走様でした」と一度軽くお辞儀をし、席を立つ。本当はもっと早く食べ終われたのだが、ナルトに合わせてゆっくりと食べた。2人分の食器を持ち、流し台へ行く。

 洗いながらチラリと少年を見遣ると、机に突っ伏し寝息を立てていた。『お腹が一杯で、眠くなって寝ちゃいました』な状態だ。それを見る裕也の目はさらに温度を下げる。

 ――狸寝入りか。会話が面倒臭いってか。俺もナメられたもんだぜ。

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