俺と山本は絶対に交わることのない平行線上の存在だと思う。
十代目がいなきゃ、関わり合うことのない真逆の人種だ。何も苦労なんて知らない顔してヘラヘラ誰にでも良い顔してやり過ごす一番嫌いなタイプ。
最初はそれこそ目の敵にしてやって、そうやってれば大抵あっちから嫌いになって離れていく。
山本も例外ではない、中学生なんて一番多感な時期だからあっという間だろう、と思ってたのに…。
山本はそんなの気にしてないかのように、他の友達よりも優先して十代目と俺と一緒にいた。
嫌じゃないのか、と疑問に思っていたときに言われた。『その腐った根性叩き直してやる』
ああ、山本は山本なりに気にしていたのか、と戦いを終えた後思った。
白い天井を見て、自分の包帯を巻かれた手を見て、
思う。
十代目に山本への罪悪感と山本を庇うようなことをいってしまったことを思い出す。
嫌われて調度いいと、前の自分なら思うはずだ。
でも、離れて欲しくないと思った。
山本の隣はいつの間にか、本当に自分でも気づかない内に心地よくて……。
そんなとき、ガラ、と扉が開いて、今一番ある意味会いたくない奴が立っていた。
ああ本当に生きてた、と安堵して泣きそうになった。本当にどうしようもなく、気持ちに頭が追い付かないくらい。
「獄寺……よかった、生きてた……」
山本が同じようなことを言う。本当にほっとした顔しやがって。俺も同じような顔見せてたら嫌だなと思って顔を俯けた。
「勝手に殺すな…」
「うん、ごめん…」
「てか、ここに来ていいのかよ。ボロボロのクセに……」
「ツナに色々聞いてさ……、どうしても、獄寺に会いたくて……」
互いにぎこちない。
山本は俺のベッドサイドの椅子に腰かけて、俺の顔を覗き込んだ。
「ごめんな、ひどいこと、言ったし…した。」
「……気にしてない、」
だって、俺はお前に、ずっと、突き放すように、そんなことしてたんだ。
俺が責める資格なんて、ない。
「なあ、獄寺。俺のこと…嫌いだよな?」
嫌いだ。と言ったら山本は泣いちゃうんじゃないか、ってくらい、山本の表情は暗かった。
窺うように俺を見つめる。
嫌いだったのに、いつの間にか大切な仲間で、
お前を失うことは恐ろしいし、
お前に背中を預けられるくらいには信頼してる、
それを言うことが、こんなに難しい。
山本の言った通り一匹狼で、信頼や失うことの怖さなんて感情からは程遠かった俺には、なんて言ったらいいか分からなくて……
思わず躊躇していると、この無言を勘違いした山本が、そうだよな…と呟いて立ち上がった。
「変なこと聞いて悪かった」
固く笑いながら出ていこうとする。
咄嗟に、山本の腕を掴んだ。
山本が振り向く。俺は、そんな山本を見つめ口を開けて、一瞬固まって、意を決した。
「……悪…かった……」
「獄寺……」
「今は……傍に、いて欲しい……」
頼めば、山本は今度こそ本当に泣きそうな顔をして、直ぐに駆け寄ってくれて、俺の手を両手で大切そうに握りしめて、椅子に座った。
「獄寺、獄寺…。ありがとう」
暖かい大きな手だな、安心する……。は、と堪らず息を吐いた。
「……よかった……獄寺に、嫌われてなくて」
笑った山本の笑顔は今まで見てきたどんなものよりキラキラしていて、思わず眸を細める。
「俺、もっと強くなる。もう仲間が近くで傷つくの見たくないから…」
「俺も……十代目だけじゃなくて、周りも守れるようになりてえ」
そうだな、と優しく微笑んで、俺の髪を柔らかく撫でる。
交ざらないと思ってたのに、どんどん近くに寄ってきて、交ざってしまった。
でも、これで良かったと思うくらい、俺は山本のことを……
「山本…」
「ん?」
「お前が、生きててよかった……」
言葉にすると再び安堵してしまって、ふ、と顔が弛んだ。
瞬間、山本の顔が強張って、
「っ、そんな顔、俺以外の前で見せちゃダメだからな……」
「え…?」
あーー、俺分かったかも、と無差別に頭を掻く山本に、なにが 、と尋ねたら、まだ秘密!と心なしかさっきより赤くなった顔をぼふっ、と布団に沈めた。

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