裏庭から響くシャッター音と男女の声×3。


「うああっ!見た今の!?ちょー可愛かった!」

「ったり前だろが!ってああ!?ブレやがった!」

「ハッ!甘いな!俺なんかムービーで撮ったぜ!」


上から私、元親くん、政宗くんの順番で、勝ち誇った顔で携帯をちらつかせる政宗くんの前に膝をつく。

負けた…と唇を噛むが悔しさよりもそこに収められたムービーの方が気になるわけで。


ここは武田荘。アパートだけど何故かみんな武田荘と呼ぶし、私もそれがしっくりくるのでそう呼んでいる。

みんなと言うのは居住者の私たちだけを指すのではなく、大家の武田信玄さんが師範をしている近所の剣道場の門下生達もそう呼んでいるからだ。

夏には合宿をしたりするのでこのアパートには共同台所や風呂まで完備されている。それらの事から考えるに最初からアパートにする為に建てられたものじゃないんだろうな、というのが私の見解。

まあ、みんなでワイワイするのが好きな性分だから合宿所みたいな造りのこのアパートは住んでいるだけで楽しいんだけど。


さらに楽しい部分を上げるならばペットオッケーという所だろう。

最近じゃお隣さんの顔も名前も知らないという希薄なご近所付き合いが増えている中、動物好きな人達が集まってこんな風に騒げる所なんてそうそう無いと思う。

本当に私は人や環境に恵まれているなと思う瞬間だ。



…なんて回想している間も携帯のシャッター音は鳴り続けている。

被写体は言わずもがな我が愛しいペット達。政宗くんちの小十郎さんに、元親くんちの元就。信玄さんちの幸村に、私の可愛い佐助だ。

携帯片手に騒ぎ立てる飼い主達を気にする事なく4匹はじゃれあっている。

じゃれあうと言っても、ひらひら舞う蝶を幸村がぴょんこぴょんこ追って、その後ろを佐助が心配そうに付いていく様子を小十郎さんが見守ってて、そんな小十郎さんの頭の上で元就が寛いでいるという構図だ。

よく考えれば不思議な光景だと思う。みんな違う種類の動物なのにこんな風にじゃれあってるなんて。

改めてその不思議な縁に感慨耽っていると政宗くんと元親くんから「今の幸村激写!」や「佐助まじで焦った顔してる!」なんて声が聞こえてきて知らず知らずのうちに頬が緩んでいた。

よく「ウチの子一番!」って揉め出す飼い主がいるけど、そういうゴタゴタもこのアパートでは見かけない。

自分ちの子はもちろん、余所の子も我が子同然に可愛いのだ。そういうアットホームというか、家族ぐるみ的な雰囲気のある武田荘は本当に素晴らしいと思う。



ひと息ついて、お互いの成果を見せ合い本日のベストショットを選出する。どれもみんなそれぞれに可愛くて甲乙つけがたい。


「うあっ!元親くんのこれ可愛い!ちょうだい!」

「まかせろ」


早速赤外線のポートを合わせれば即座に送られてくる画像。そこには頭に蝶を乗せ、ちょこんと首を傾げた佐助が映っていた。遊び疲れたのか私の膝によじよじ登ってきた佐助を抱き上げて、貰った画像を見せてみる。


「佐助、頭に蝶乗ってるの気付かなかったの?」


ふふ、と笑って訊ねれば、「いつ撮ったの?」と不思議そうにしている佐助。

この子も随分ここでの生活に慣れた。ペット同士はもちろん、飼い主達にも慣れたみたいでたまに部屋にお邪魔してたりするから最初はすごく驚いたものだ。


「このォ、かわいこちゃんめえ!」


きゅうと抱きしめて喉元をくすぐる。
くふくふとじゃれつく佐助の頭を撫でて、最近急激に増えた「佐助ファイル」へ収納。

何だかんだ言って一番増えるのは自分ちの子の写真だ。



2人の携帯を見せてもらいつつ、私の携帯も見せつつの展覧会。その後も何枚か画像の行き来があってホクホクしながら貰ったそれらをファイルへ収納した。


prev next

bkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -