∴ Nと観覧車に乗る 「……此処から見える風景は素晴らしいね」 ぽつり、と。まるで一人言のように呟かれた言葉に、自分はどうすればいいのか分からなかった。返事をするべきか否か。迷った末に私はそうですね、と頷くことにした。 「飛行ポケモンに乗った景色とは、どこか違っていいですよね」 「うん。とても新鮮だ」 「Nさん、観覧車に乗るのは初めてですか?」 Nさんはくしゃりと顔を歪めた。もしかして聞いてはいけないことだったのだろうか。ごめんなさいと、謝罪の言葉を口にするのを遮ったのは「二回目だよ、乗るのは」という質問の答えだった。二回か。さっきの発言がまるで初めて乗ったかのように聞こえたけど、二回だけならおかしくはない。私は何度もトレーナーと戦っては一緒に乗ってるから、此処からの景色は何度も見ている。だからといって見飽きることなんてこれっぽっちもないけど。それほど素晴らしい眺めなんだ、観覧車から見える風景は。 「……二年前に、あるトレーナーと乗ったんだ」 「へぇ…」 「その時は、外の風景をこうして見ようとはしなかった。他のことに頭が一杯で、そんなこと考えもしなかった」 何故彼はこんなにも泣きそうな顔をしているんだろう。私に分かるのは、私じゃどうにもできないということだ。 「……―と、もう一度乗りたいなぁ」 Nさんの目から、涙がぽろりと零れた。 -------------- トウヤとトウコはさっさとBW2のNに会いにいってやってくれ。頼みます。 ← (top) → |