6日目


ゼブラさんの左頬が裂けててすごく怖い。いつもは縫わてるんだけど、たまにゼブラさんのテンションが上がると縫っていた紐が千切られてしまう。今回がそれで、巨大オムライス(+巨大ハンバーグ)を夕食として食卓に出すと、まぁ恐ろしいぐらいにテンションが上がったらしく、ブチィっといっそ清々しい音がして千切れた。
ゼブラさんには慣れてきたけど、怖いものは怖い。口が裂けた大柄の男の人と同居なんてホラーすぎる。いつもは3日に一度の割合で来てくれるトリコさんが縫ってくれるんだけど、生憎今日来たため次に来るのはせめて2日後だろう。裂け間から口の中が見えて怖いから、出来るだけ顔を見ないようにしてみた。


「ぜ、ゼブラさん」

「あ?どうした」

「その、口って自分で縫えませんか?」

「何でだ」

「怖いんです」

「……はっきり言うようになったなテメェ」

「ごめんなさい事実ですから」


慣れほど恐ろしいものはない。あのゼブラさんに物事をはっきりと言えるようになったのだから。まだ怖いけど。


「自分の頬縫えるほど器用じゃねぇ」

「そうですか…」

「気になるんならテメェが縫えばいいだろうが」

「無理ですよ!そんな道具持ってませんし、やったこともありません!」


そう主張すると、ゼブラさんから手渡されたのは小さなケース。開けると針と糸が入っていた。…何で持ってるんですか。


「布ぐらい縫ったことあんだろ。それと同じでいい」

「…身長差があって、縫いづらいです」

「オレがそこでねっころがる」

「………分かりました」


どうして縫わせようとするんですかゼブラさん。




「ぬ、縫いましたよ」

「あー」


何とか縫えた…!!ただ、この体勢はきつい。ソファに座った私の膝にゼブラさんの頭を乗せて縫う。膝の負担が凄い。いや、そんなにじゃないけど痛い。そして恥ずかしい。…あれ、終わったって言ったのに何で退かないんですかゼブラさん。


「ゼブラさん、えと、退いてください」

「断る」

「ぅええええええええ!?」


何故。お、落ち着くんだろうか。いやでもやっぱり退いてくれないと困る。もう眠りたいんだ。


「ゼブラさん、お願いしますから…」

「テメェは」

「?」

「まだオレが怖ぇのか」


ゼブラさんからの、まさかの質問。この人は嘘をつかれるのが嫌いだし、私も正直に言いたい。


「はい、怖いです」

「即答されっと地味に傷つくな」

「すみません」

「・・・さっさとオレに適応しろ」

「て、適応ですか」


ああそうだ、と言ってゼブラさんは退いた。適応。私が、ゼブラさんに。以前から何回かトリコさんと小松さんが来て、私と話している姿を見てゼブラさんは何を思ったんだろう。自分の時とは違って、怯えもなく普通にはなしている私の姿に、どこか違和感でも感じたんだろう。同じ仲間なはずなのに、どうして態度が違うんだとか。ゼブラさんは、寂しかったりしたのかな。確かにまだゼブラさんに普通に接することができないけど、以前も言ったように私はゼブラさんがいい人だと知っているし、そんなゼブラさんが好きでもある。


「ぜ、ゼブラさん」

「何だ」

「適応、するよう私頑張ります!」


私だって、ゼブラさんと仲良くしたいと思っているんだ。うん、頑張ろう!