「倉間さん、俺たち、付き合っているんですよね?」 「…………ああ、それが何だよ」 「倉間さんって、『好き』って、割とよく言ってくれますよね」 「……………………悪ぃかよ」 顔を真っ赤にしながらも遠回しに肯定してやれば、「いえ、別に不満があるとかそういう訳じゃないんです」と返ってくる。 「嬉しい、嬉しいんですけど…ただ……俺、『愛してる』って言われたことないよなー、と」 「ゴホッっ!!??」 手に持っていたスポーツドリンクを飲もうとした所にこの爆弾発言である。思わず噴いてしまい、むせる倉間。 これが神童や霧野辺りならば、照れながらも「そんな事ない、愛しているよ?」とでも言えたのだろうが、流石はツンデレ、倉間には無理な話だったようだ。 「何で急にんな事言うんだよ」等々抗議したいのは山々であるが、絶句して、言葉が出ない。 口をただパクパク開け閉めする事くらいしかできない倉間を尻目に、天馬は堰を切ったように喋り出す。 「普段倉間さんって、『愛してる』どころか『好き』とも言ってくれませんけどでもあの、えっちな事してる時とかは割とよく言ってくれますよね!?だけどそんな時でも『愛してる』なんて言ってくれないとか、倉間さんって俺の事一体どーゆー目で見てんですか、まさかただの単なるせーよくしょ「それ以上言うなァァァァァァァァ!!!!」」 際どい所で、これまた際どすぎる言葉を発そうとした天馬の口を必死になって塞ぐ。一方塞がれた天馬の方はまだ不満そうにもがもが言っていたが、とりあえず黙った。 「おま、バカか、っつーかそんな言葉どっから覚えてきたんだよ!」 「えーと、狩屋が言ってました」 「あいつ……今度会ったらサイドワインダー喰らわせてやる…」 痛む頭をおさえつつ、「それで、何で急にんな事言い出したんたお前は」と問いかける。 「えっとまあ…狩屋と話してて」 愛してるって言ってくれないって事は、倉間先輩、天馬君の事ホントは好きでも何でもないんじゃない? そんな狩屋の言葉が蘇り、未だ天馬の胸の奥に突き刺さって、しくしくと痛みを訴える。 泣きそうなのをこらえてじっと俯いていると、不意にすっと褐色の両手が伸びてきて、そのまま天馬の頬に触れ―――引っ張った。 「い、いひゃいいひゃいなにふんへふはっ!?」 「うっせえ、お前はちょっと黙ってろ!」 それから、手は天馬の頬に添えたまま、顔を真っ赤にさせ、うー、とかあー、とか唸ること数十秒。さすがに恥ずかしくて手を離してください!と叫びだしたくなってきた頃、その言葉は降ってきた。 「…………好き、だ。……………………愛してる」 「………〜っ!!」 黒檀色の三白眼がじっと嵐青色の眼を見つめながら放たれた言葉を脳が理解し、かっと頬が赤くなった時にはもう、唇は塞がれていた。 『愛してる』って言えなくて 「なんで今まで言ってくれなかったんですか!」 |