こんな目覚めなら何度でも
「浦原さん、起きてください」
呆れたようななまえの声に背を向けたまま思う、なんとも贅沢な朝だと。
「もうお昼ですよ、いい加減寝飽きたでしょう」
──いやぁそれが飽きないんスよ、起きるまで居てくれるんで。
なんて胸に秘めながら、顔が見えないのをいいことに頬を緩めた。
「浦原さーん、起きないと日が暮れますよ」
悩ましげな声にようやく寝返りを打つ。唸るように喉を鳴らせば彼女の声が明るくなり、そのまま寝たふりをすると、残念がる。百面相が想像できる声、全く贅沢だ。
「……起きないと、悪戯しますよ」
ぼそりと珍しい独り言。これは聞き逃すまいと、手首を掴んだ。
「へぇ、それはどんな悪戯です?」
「おっ起きてるじゃないですか!」
「ちょうど起きたんスよぉ。……で、何をしようと」
「起きたらしませんよ、聞かなかったことにって、うわぁ!」
ぐい、となまえの腕を引いて布団に引き摺り込む。貴女を拐かすなんて朝飯前なんですよ。
──ではもう一度寝たらしてくれるんですよね、悪戯。
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