転職 プログラマー A子さんの愉快なホワイトデー | ナノ




ホワイトデーの季節到来か…。

冷めた珈琲を飲みつつ会社の書類に目を通した。

先月のバレンタインの売り上げはトップ3に食い込んだ。

今月のホワイトデーの売り上げも期待したい所だ。

先月は飽きなかったかな。

面白い転校生は、東冷涼(あずまれいり)の手によって社会的に存在抹消された事だろう。

彼女がどうなったかなんて私の知る所ではないし、興味もない。

図書室の書庫を私物化しているのは私ぐらいだろう。

愛用しているノートパソコンを操作していると

「栄子様、大変です!!」

礼儀正しい東冷涼(あずまれいり)がノックもせずに入ってきた。

珍しい事もあるもんだ。

「どうした、冷涼?君が礼儀を欠くなんて珍しい。」

お嬢様然とした冷涼には似つかわしくない行動だと指摘すれば恥じるように謝罪を述べた。

別に謝罪なんてしてくれなくても良いのだけれどね?

私は水筒を取り出し珈琲を冷涼専用のカップに注ぐ。

座るようにソファーに促し、カップを手渡して落ち着くように言えば顔を真っ赤にして俯いた。

本当に今日は不思議な日ね。

「私の、クラスに知らない子がいたんです。」

恐怖を滲ませた声は

「転校生でもなく、ずっと前からクラスメイトだった女の子がいるんです。」

ポツリポツリと話し出した。

「それで、その子の名前は?」

怯える冷涼から情報を聞き出すが

「××という名前です。」

ノイズが雑じったように聞き取れなかった存在しない生徒の名前。

ふと考えた。

私という存在はイレギュラーだ。

私の場合は死んでおり、この身体の所有者が生きる事を放棄したから私が代わりに生きているのだ。

そして、あの宇宙もトリッパーだったな、と。

精神病院に突っ込まれた彼女がどうなったかなんて今更興味を持つ事もない。

単なる暇潰しに見に行く事はあるけれどもね。

冷涼の謂う今回の見知らぬ生徒は、トリッパーなのだろう。

この世界が漫画だった事を知っている人物で、世界に異物と判断されたのかもしれない。

何故なら彼女の名前を聞き取る事が出来ないからだ。

そして、東冷涼(あずまれいり)に存在を否定されたからだ。

「冷涼、怯えるな。アレは私が処分しよう。そう、私の可愛い冷涼を怯えさせたのだから楽にはしないさ。」

怯える冷涼を抱き締めて私は嗤った。

あぁ、また面白い劇が始まる!


ねぇ、知ってる?


この世界は現実なんだよ。






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