初めまして、おっさんです。
プリプリのピッチピチなギャル(死語)だった筈なんですけど、何故か辻馬車のおっさんになってた私です。
アビスらしき世界のおっさんになって彼是三年が経ちました。
おっさんの敵は魔物と盗賊で、腐術(誤字非ず)が上達し、今ではチョッとした有名人です。
今日も今日とてお仕事に励んでいたらタタル渓谷で車輪が外れました。
ついてない!!
グチグチと愚痴を零しながら車輪を直し、ペコペコとお客様に頭を下げ、下僕のように川に水を汲みに行けば運命の出会が!
草臥れたルー君とキチ害メロンを見て、おっさんってぼったくりのおっさんポジだったわけ!?
と内心絶叫しつつ、彼等を観察した。
主人公とメイン疲労員が目の前にいるんだもの。
興奮しない方がオタクとして終わってるわ!
「誰!?」
ナイフを構えるティア・グランツ。
わぁ〜お、おっさんビックリだわ。
隣のルー君がドン引きしているよ?
「いやいや、アンタこそ誰だよ。丸腰の相手にいきなりナイフを構えるなんて信託の盾も地に落ちたもんだな。」
地に落ちるというより地殻を突き破っている気もしなくはないが、おっさんの慈悲で地に落ちるにしてあげたんだぞ。
おっさんの下した評価が気に食わなかったのか、ティア・グランツは顔を真っ赤にして
「失礼な事を言わないで頂戴!大体こんな時間にこんな所にいる方が怪しいわ!警戒されて当然よ!」
頓珍漢な発言にルー君が宇宙人を見るような眼でティア・グランツを見ている事に気付いてない彼女。
自分も怪しい人間だと言っているのに気付いてないのかな?
いや…気付いてないんだろうね。
私は話の通じないティア・グランツを無視してルー君に尋ねた。
「そっちの青年は大丈夫?此処ら一帯の魔物は弱いけど数で押されたら死ぬよ。おっさんの辻馬車に乗っていくかい?」
最初はキョトンとした表情をしたルー君は、おっさんのお節介に目を輝かせた。
よっぽど疲れたんだろうね。
箱入り息子だし、足だって靴擦れしているだろうに…
薬草あったかな?
と思考していたらティア・グランツがルー君を遮って
「ならサッサと案内して頂戴。」
居丈高に言い放った。
ムっとするルー君と唖然とするおっさん。
ゲームをプレイしていた時も常識ねーな!
と思っていたが、実際に目の当りにすると怒りよりも呆れるもんなのね。
「なぁ、青年。あの娘とはどんな関係?」
おっさんが尋ねるとルー君は物凄く嫌そうな表情でティア・グランツを見詰めながら
「俺の家を襲撃して俺を誘拐した犯罪者。」
ボソっと暴露してくれた。
やっぱり原作通りなのね。
おっさん、唖然としちゃったわ。
「うぉおおおおおおおおおお、犯罪者かよ!」
ルー君を背に庇いティア・グランツから距離を取った。
「ルーク、失礼な事を言わないで!貴方もルークの言ったことを真に受けないで頂戴。」
「ざっけんな!俺の家の奴等を歌で眠らせてヴァン先生を襲ったじゃねーか!俺は予言で屋敷から出ちゃいけねーのに外に連れ出したら誘拐だっつーの!!」
ギャースとルー君が吠えれば
「ヴァンが目的だって言ったでしょ!それに連れ出した事は謝ったじゃない!!それにルーク貴方にだって責任があるのよ!貴方が邪魔しなければこんな所に飛ばされる事も無かったのよ!」
私は悪くないと責任転換するティア・グランツ。
こんなのが現実世界では理想のヒロインとして公式で公表されていたのか…
おっさんカルチャーショックだわ。
「不法侵入に傷害罪に誘拐のトリプルコンボかぁ…おっさん凶悪犯ってやつを初めて見たわ。」
ボソっと零したおっさんの言葉を捉えたティア・グランツがギっとおっさんを睨み付けた。
「失礼な事を言わないで!私の何処が犯罪者だと言うの!?」
ギャンギャンと吠えるティア・グランツに
「え?全部。てかね、おっさん以外の人間に聞いても同じ事を言うよ。まず譜歌で強制的に眠らせるのは傷害罪にあたる。これオールドラントの常識。知らないなんて恥だよ。民間人でも知っていて当然なのに軍属で知らないなんて恥以前の問題だよ。次に自宅に招かれていないのに勝手にお邪魔するのは不法侵入だ。最後に本人の意思に反して連れ出しているのは誘拐だね。平民でも誘拐は絞首刑になるよ。貴族だと一族公開処刑かな。この青年が貴族だったらダアトと戦争になるかもねぇ。」
政務者が予言に頼らず全うだったら速攻で戦争に突入だわな。
キッパリと犯罪者だと言えば何故かルー君も真っ青な顔になった。
私は悪くないとブツブツと呟いているティア・グランツは無視してルー君を気に掛ける。
「な、なぁ…戦争になるって本当か?」
ルー君の疑問に
「うん、上位貴族や王族だったらダアトに宣戦布告してもおかしくないよ。導師以下幹部の首を差し出しても回避出来るか微妙。」
予言に浸かってない全うな政務者ならねー
という心で付け足しつつ
「まぁ、誘拐された当事者が五体満足で帰国し、且つ罪人の首とダアト温情を上奏すればギリギリ回避出来るかもしれないよ?」
まぁ、ダアトは自治を取り上げられキムラスカの管理下に置かれるけどね!という言葉は飲み込んでルー君を宥めた。
未だブツブツと意味不明な事を言っているティア・グランツを余所にルー君を馬車に乗せケセドニアに向かって走り出す。
おっさん、本当ならグランコクマに向かわないといけないんだけどね!
誘拐犯からルー君の身柄を保護しなくちゃいけないし、お客さんにも諸事情諸々説明してケセドニアの領事館に行く事を了承してもらったから良いんだよ!
ケセドニアへの道中おっさんはルー君と仲良くなった。
別れ際にルー君がお家においでと招待してくれたり、報奨金をガッポリ貰ったりとラッキー尽くしだったわ。
そして風の噂でティア・グランツは処刑され、自称和平の使者一行はタルタロスで国境を超えようとして戦争になりかけたらしい。
が、キムラスカとマルクトが戦争するよりも導師を誘拐して殺害したとしてマルクトとダアトが戦争を起こした。
ルー君といえば、アクゼリュスへ行く機会がなくなり、おっさんと文通していたりする。
おしまい。