A子さん、オールドラントの覇者になる

もう百は超えているんじゃないの?

逆行の繰り返しで時間の感覚がないエイコです。

もう創世記時代に逆行しないと話にならないと思うわけ。

原因を作ったのは創世記時代のユリア・ジュエだし。

だからさ、責任を取って貰おうと思ってね。

ほら、サッサと逝くわよ。


こうして初・創世記時代逆行が始まった。


2000年後に世紀の大罪人ヴァン・グランツとティア・グランツのルーツとなる女。

「新しい弟子希望の子かしら?生憎、弟子は沢山いるのよ。」

用件も聞かずに勝手に弟子扱いしようとする図々しい女に流石はヴァンとティアの素になっただけあると思った私は普通だわ。

「違うわよ。アンタみたいな御馬鹿さんの弟子にどうしてならないといけないわけ?」

ふっと鼻で嗤ってやれば

「貴女、私を誰かと解っているのかしら?」

上から目線なユリア・ジュエ。

「世紀最大の極悪人であり予言という偽りを説いた欺瞞の女でしょう。」

シレっと毒を吐けば

「私が詠む予言は本物よっ!失礼な事を言わないで頂戴!」

キャンキャンと喚く姿はティア・グランツそっくりだ。

「それに私はローレライと契約しているのよ。貴女はそれが理解出来ない頭の持ち主なのね。」

虎の威を借る狐だな。

私の手に収まっているローレライもユリアの言い分に不愉快そうに身体を揺らした。

「惑星消滅予言を詠んで怖くなったからと崩落確定のホド島に隠し、ユリア式封咒という血族にしか解けない封印を施した馬鹿女。」

瘴気から逃れる為に外殻大地を作り出す作戦だもんねぇ?

そんな事をされたら困るのよ。

「星は滅びようとしているのよ?私が救わなくて誰が救えると言うの?」

ティアと同じぐらいに傲慢で実力が伴っている分厄介だとは思うが

「別に誰も救わなくて良いし、というか救ったつもりでいるわけ?ていうかさ、仮に外殻大地を作り上げてどうするの?予言通りって?星を本当に滅亡させるのはアンタが元凶って事は十分理解したわ。それにしても否定しないのね、怖くなって譜石を隠したのは…アンタ馬鹿?」

どこが馬鹿なのか指摘するのも面倒なので手の中にいるローレライに

「ローレライ、ユリアに見た夢は覚めた?」

元凶はコイツだぜ、って教えてやる。

私の呼び掛けに呼応したローレライは揺るりと人型を取った。

ユリアと出会った頃のローレライであれば無理な事だったのだろうけどね。

「彼方が、ローレライ?」

自分が絶対という妙な自信を持つユリア・ジュエは、きっとローレライなら私の言葉を理解して賛同してくれる筈〜なんて思っているのだろう。

流石アイツ等の祖先なだけあるな。

『……如何にも、我がローレライだ。』

ローレライの声に喜色ばむユリア・ジュエは図々しくも

「ねぇ、ローレライ。私は星を滅びから助けたいの。だから少しの間で良いから人間に力を貸して頂戴。」

お願いをしてきた。

ローレライが断らないと思って疑問系にしない辺り、ユリアの正体見たりって所だろう。

『断る』

スパっと断りを入れたローレライを信じられないという眼で見るユリア。

「ローレライ、どうして?」

悲劇のヒロインごっこをするユリアの姿にティアの面影を見たローレライの機嫌は益々悪くなっていった。

ガンとして聞き入れないという姿勢のローレライに対し、原因を自分ではなく他人(私)にあると睨み付け

「貴女、一体ローレライに何を言ったの!?ローレライを騙すなんて最低だわ!」

ヒステリックな声で怒鳴り散らす姿は醜悪この上ない。

「騙してないわよ。本当にアイツ等にそっくりね。子孫も子孫なら祖先も祖先って事かしら。ま、世界を救う気でいるなら死んで頂戴な。」

コンタミで出したローレライとの契約の証であるローレライの剣でユリア・ジュエをバッサリと斬り捨てた。

「ガッ…ハァ…な、……で?」

何でローレライが自分を見捨てるのか?

何で契約の証を私が持っているのか?

そんな彼女の疑問に良い笑顔で

「決まってるでしょう。星の滅亡を隠蔽して世界を滅亡させる子孫を持つ女を誰が助けたいと?星の滅亡を望んでないローレライにとって貴女は邪魔なのよ。」

事切れる彼女に言い聞かせた。

ま、言い聞かせた所で彼女の人生は今終わったのだから。

彼女の縁者は迫害され存在しなくなる事だろう。

「さて、ローレライ。星の再生を始めるわよ。」

こうして私はユリアの弟子を殺害し、隠して外殻大地計画は頓挫され世界は瘴気に満ち溢れた。

死に逝く人を見送りながら第五音素が世界を多い大地を焼き尽くして行く。

まぁ、一般的に言う野焼きって奴ね。

これを行うことによって徐々に大地の再生を促して行った。

予言という麻薬に浸っていた馬鹿共は野焼きで一層されたので、残った人間を調教して放逐する。








そして2000年後、一度は滅びかけた星は自然に任せ再生を繰り返し命の息吹を吹き返し始めた。

外殻大地などというアホな存在はなく、星本来の大地での再生により人は原始に戻り発展を遂げている。

瘴気は着実にソエルの木とチーグルの森の木の浄化作用によってあと僅かであるし、また人や魔物も少量の瘴気であれば耐性があるのでこのまま手を加えないでいれば数十年後には完璧に浄化されるだろう。

予言という存在を消し去った為、人々は個々の文化を持ち発展していった。

そして今、新たな時代の幕開けとして歴史が刻まれる。

世界最大の大国であるグランマニエ皇国と新帝国ニーズホッグの和平が執り行われるのだ。

宗教自治区ユラクドシルの聖女として掲げられるのがエイコという女性。

精霊と心を通わせ、全ての存在に感謝の心を捧げる事を説いた最初の人物である。

知らぬは仏とはこの事だろう。

彼女を知っている者達が万が一にでもいたら爆笑するか必死で否定するか恐慌状態に陥って引きこもるかのどれかだ。

まぁ、歴史を操作している彼女は予言で未来を縛ったユリア・ジュエとなんら変わりが無い。

やってる事が一緒だし。

しかし、人が持つ力を最大限に生かす場を作り出したのはユリアでは有り得なかった事だろう。

エイコのモットーは超実力主義だからだ。

「今日も平和ねぇ。」

コーヒー片手に和平の一面を賑わせている新聞を読みつつ私はローレライに声を掛けた。

声を掛けられた本人はTVに齧り付いてルークの晴れ姿に感涙していたりする。

キモい。

「ルーーーーーーーグゥーーーー」

もう人の名前じゃないよ、と心の中で突っ込みを入れつつも気が晴れるのを待つことにする。

あの世界の彼は今は新帝国ニーズホッグの第一皇子ルーク・フォン・ファブレとして生きている。

アッシュは彼の従兄弟として存在しており第二王位継承権を有していた。

イオン、シンク、フローリアンは三兄弟として生を受け、宗教自治区ユラクドシルを治めている。

ピオニーはグランマニエ皇国の若き皇帝として君臨し、補佐として幾分マシなジェイド・カーティスとサフィール・ワイヨン・ネイスが彼を支えて今を生きている。

ガイはグランマニエの貴族として、アニスはそのメイド、ナタリアは新帝国ニーズホッグの王家直属の騎士団に属する軍人一家として今を生きている。

しかし此処で二人だけ転じる事さえも赦されなかった者達がいた。

そう、ユリア・ジュエの子孫としてオールドラントを滅亡に招いたヴァン・グランツとティア・グランツの二人である。

予言という害悪な存在を復活させるキーパーソンな彼等の存在はエイコとローレライの手によって存在否定されたのだ。

まぁ、もし生まれ変わってユリアの子孫だと声高々に喚いたとしても私刑が待っているだけだったりする。

ユリアの名は聖女ではなく、悪の象徴として現在を飾っているのだから。

「オールドラントという世界は無くなったけど、これで良いんじゃない?」

そんな彼女の呟きは、目の前のローレライには聞こえてなかったが、きっと彼も同意した事だろう。



こうして星の記憶を抱く者の永く果てない旅路は終わりと始まりに辿り着いたとさ。




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