貧乏日記

さよなら、世界。


こんにちは、異世界。



私には前世の記憶がある。

前世では国際弁護士を務めていたバリバリのキャリアウーマンだった。

今?

今は貧乏貴族だ。

貧乏だけどただの貴族ではない。

由緒正しいキムラスカ王国の王族なのだ。

そんな王族が何故、平民にも負けないぐらい貧乏かというとお上の戦争の尻拭いだったりする。

ただでさえ国庫に風穴が開いているぐらいヤバイのにホド戦争を起して敗戦し、領地を分捕られるとは何事か!!

しかも民には満足な補償すらしておらず不満一杯だよ、コンチクショー!

齢12才で父を当主の座から蹴落とし、貯めてあった財を一斉に売り捌き、簡易宿舎に病院、就業所を作ったら金が無くなった。

電卓なんて高価な品物は家にはない。

あるのは算盤だ。

パチパチと虚しく部屋に響く算盤の音とガリガリと怨念篭めて書き出す予算。

「リーナ様、そろそろ休憩になさいませ。」

気の利くメイドのシンファの差し出した紅茶を啜った。

不味い。

仕方ない、品種改良して植物が育つだけマシというものだ。

「もう少しエグ味が無ければ市場に出せるのに…」

はぁ、と溜息を吐けば

「良薬口に苦しという健康を掲げたキャッチフレーズで出しましょう。効能は抜群なのですから問題ありませんわ。」

ニッコリと不味茶試作品を市場に出そうと提案してくるメイド。

そうだね、味に拘ったままだったらお前達の給料も出せないもんね。

「販売方法はシンファ達に任せるよ。案が出来たら私の所に持って来て頂戴。」

そんなケチ臭い遣り取りがキムラスカを根底から覆す事になるとはこの時、私は考えもしなかった。





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