あの同窓会の再会から2年が経過した。
ハルキの宣言通り椎名翼というサッカー選手と彼女は結婚するという。
テレビを点ければハルキと今話題のサッカー選手との結婚会見が開かれて不愉快な気分になる。
『本当に美男美女のカップルですね。椎名さん、橘さんとの馴初めは?』
記者の一人に椎名と呼ばれたサッカー選手が照れ臭そうな表情(かお)で
『フットサルで遊んでた時に怪我をして手当てをして貰ったのが切っ掛けかな。』
隣にいるハルキを抱き寄せた。
触るな!!
と叫びそうになる。
そんな権利なんてとうにないというのに…
苛々が頂点に達する前にテレビを消してしまおうとした瞬間(とき)
『最初はお互い眼中になかったんですよ。互いに喧嘩して仲直りして、それを繰り返す内に俺が惚れたんだ。ハルキを振った初恋の相手には感謝してる。コイツを振ってくれたんだからさ。』
初恋の相手と聞いてリモコンを落としてしまった。
『俺さ、ハルキに何度も振られてるんだぜ。』
ケラケラと笑う青年に
『本当ですか!?』
大げさに驚く記者の一人。
『マジだって。仲間を引き込んでハルキを手に入れたんだからな。』
青年の言葉にギリっと噛んだ唇から血が滲んだ。
彼女の隣は俺であった筈なのに…
『プロポーズはやはり椎名さんからですか?』
俺の心情とは別に和気藹々と進む結婚会見。
『いえ、私からです。』
ニッコリと綺麗に微笑む彼女は
『年下の翼に“絶対に幸せにするって不確かな約束出来ないけど幸せにします。お嫁に貰って下さい”って頼み込んだんです。』
違う男に囁いた愛の言葉を紡いだ。
あの時、君を追い駆けていれば現在(いま)隣にいれたのかな?
俺はまだ君が好きだよ。
いや、愛しているんだ。
でも気持ちも何も全て告げてないのに気付けば全てが終わっていた。
ブラウン管越しに君は幸せそうに笑う。
「一生懸命努力している姿が好きなのは変わらないんだね…」
ポツリと洩らした俺の言葉は一人暮らしの部屋に溶けて消えた。
ベランダを飾る薄青色の花がユラユラと揺れる。
まるでそれは俺の心のようだ。
勿忘草、追想の愛。