一目惚れだった。
人目を惹く容姿とは裏腹に彼女の瞳は絶望に染まっていたから…
大病を患い入院した俺と重なった気がしたんだ。
だからハルキに近づいて気を引いたんだよ。
徐々に俺とハルキの距離は縮んでいった。
その度にハルキの事を一つ一つと知っていく。
小さな事でも嬉しそうに笑うハルキが好きだったんだ。
でも…どこでその心を失くしてしまったんだろう?
「神野マリアよ。程々にヨロシク。」
ぶっきらぼうに告げられる自己紹介に疎(まば)らに拍手が起こる。
平凡な顔立ちの彼女に何故か俺の心に靄が掛かった。
「アンタが私の隣なの?」
厭らしい眼で俺を見る神野に俺は吐き気を感じる。
でも俺の口から出てきたのは
「そうだよ。ねぇ、マリアって呼んでも良い?」
心とは裏腹な言葉だった。
平凡で異質で異端な奴の名前を嬉々とした態度で、声で、媚を売るなんて有得ない!!
それでも身体は自由を奪われたように俺の意思を裏切って神野を優先させた。
俺を含めR陣は気持ち悪いぐらいに神野に心酔していく。
心とは裏腹に神野の操り人形のように…
段々と心が麻痺していくようだ。
「あのね!橘ハルキをメチャクチャに壊したいんだ。協力してくれるよね!」
ニタニタと不気味な笑いをする神野に嫌だと心が叫ぶのに
「勿論だよ、マリア…」
滑稽な操り人形になった俺は神野が望む言葉を吐く。
俺の言葉に満足した神野は
「流石、私のお気に入りだよ!ふふ、愉しいお遊戯の始まりだねぇ〜」
全てを見下した。
ゆらゆら、ユラユラ、水面に映る月の如く少年の心に波紋を呼び掛ける。