私は恍惚と嘲笑(わら)う。
腹の中には次代の神が宿っていた。
黒龍とその神子は輪廻を転じて人の世に生れ落ちる。
どこかで巡り会えば次こそは倖せになれるだろう。
「ハルキ」
私を呼ぶ声に思考の淵から現実に戻った。
夫となった彼の人に私は
「元気な子が生まれると良いな。」
聖母に相応しい笑みを浮かべる。
本音としては生まれて徹底的に教育を施したらこの堅苦しい肩書きからおさらばするつもりだ。
「きっと元気な御子が生まれる。」
大きくなった御腹を撫でる彼に
「そうだね、聡明な子が生まれる。」
人間に傾倒しない子供が生まれることだろう。
理不神みたいなのも迷惑だが、白龍みたいな神はもっと迷惑だ。
誰か一人に傾倒する事無く、傍観者として君臨出来る神を創らなければならない。
天と地の八葉と交わり生まれる子供達は、きっと“繰り返し”をした愚かな神子と龍の記憶を持つ事だろう。
反面教師としては良いことなのかもしれない。
「ハルキ、愛している。」
唐突に呟かれた愛の言葉に私は偽りの愛を返した。
「私も二人をアイシテいるよ。」
<天と地を創る神として元・語部少女は嗤うのです。踊らされているのは誰なのでしょうか?私?アナタ?それとも理不神?真相は彼女しか知らない事でしょう。 著者:語部少女>