騎士団員おいしい。 | ナノ


▼ 6 団長、怒る

「おい。なんとか言ったらどうだ、ルニア。お前、他の男と寝たんだろ?」

騎士たちの人目がある中庭。
ベリアスは小さなコウモリとなった俺を天高く掲げ、射抜くような目つきで問い詰めてきた。
端から見たらガタイの良い騎士が小動物を虐待している図だ。
そもそも俺は、この姿では会話できない。

「ピーッピーッ」
「正直に吐けよ。俺のいない隙に男漁りとは、所詮ただの淫魔か」

コウモリ相手に激怒している。
俺の行動が、なぜこれほどまでに男の逆鱗に触れているのか、理解できなかった。

その時、ベリアスの背後に馬の手綱を引いた、白ローブ姿の従騎士が見えた。
俺たちの様子を目の当たりにし、唖然とした表情を向けている。

「だ、団長。どうされましたか」
「ミラト。馬を厩舎へ運んでおけ。俺は急用が出来た」

振り向きもせず俺の体を握りしめる。
痛い痛い!

助けを求めるように従騎士を見ると、震え上がるような顔をした奴も、俺に助けを求めていた。

『言うなよ、絶対俺のことは言うなよッ』

ミラトが口をぱくぱくさせて訴えている。
分かっている、俺は悪魔だが一度した約束は守るつもりだ。
お前が服オナしてたことは内緒にするって。

従騎士と秘密のアイコンタクトを済ませた後、俺は無理やりベリアスの黒ローブの中に押し込まれた。
この怒り具合、もしやこれからお仕置きタイムが待っているのか?
一人ほくそ笑み、そのまま俺の住処である尋問室へと連れられた。



ベリアスはあろうことか、部屋のソファの上に俺をボン!と投げ捨てた。
『ぴぃッ!』
慌てて受け身を取り小さな翼で体を包む。

「早く人化しろ、ルニア」

吐き捨てるように命じられ、俺は心躍らせながら言う通りにした。
人の姿になり、足を組んでふんぞりかえっていると、ベリアスは俺の方に向かってきた。
怖い顔のまま、中腰で見下ろされる。

短めの金髪と同じ黄金色の瞳は、普段とは違い、感情豊かに揺れ動いていた。

「なんだよ? あんた、何そんな怒ってんの。ちょっと自由に散歩してただけだろ。つうか、俺が誰かと寝たらあんたにバレちゃうわけ?」

余裕ぶって尋ねると、ベリアスはソファの上に乗り上げてきた。

「足を開け」

呆気に取られる俺に構わず、膝で両足を割り、俺のズボンに手をかける。

おい、本気か?
やる気なのか?

長らく放置状態だった俺の興奮が、一気に上り詰めていく。
この男はたとえ俺に興味がなかったとしても、他の人間に奪われることは我慢ならないのかもしれない。

「淫紋だ。見せろ」
「え?」

強引に衣服をぐいっとズリおろし、下腹部がーーいやその下のモノも全て露わになった。

「ん、んぁッ」

すでに準備万端で勃ち上がったものが、ベリアスの眼前に現れる。
だが無表情の男の視線は、その後ろの黒い印、淫紋を凝視していた。

「おい。勃てるな、邪魔だ。見えないだろ」

腹についた俺のチンポを無造作に手でぐいぐい押さえつけてくる。
ああっそんなにしたら、まずい!

「はぁ、あぁッ、んっ、もっとぉ……ッ」
「あ?」
「ん、あぁぁっ、ダメッ出るっ!」

ほぼ最速記録で達してしまった。
腹の上の淫紋、そしてベリアスの手にも俺の白濁液が容赦なく飛び散る。

「お前……俺にかけたな」

目の前の騎士は凄い形相で睨みつけているが、予期せぬぶっかけといえど、計り知れない多幸感が襲う。
やはりこれは俺の原点ともいえる!

興奮冷めやらぬ俺はベリアスの手を掴み、口に持ってきた。
ぺろぺろと舐め取り、綺麗にする。
途端に騎士は黙り込んだ。

「んむっ……は、ふ……っ」

視線が突き刺さるのを感じ、さらに気分が高まっていく。
拭い終わると、まだ無表情で見下ろされてることに気づいた。

「なあ、あんたの舐めたい。だめ……?」

その言葉を問うだけで、股間だけでなく後ろもぬらりと疼き出す。

「それで、お前の腹は満ち足りるのか?」
「ああ。そうだよ。精気は口からでも、体内に取り込めるんだ」

俺の提案に、騎士が考える素振りを見せる。
よしよし。なかなか良い感触だ。
もうひと押しすれば、久しぶりに奴のデカイ逸物が拝めるかもしれない!

歓喜に震えていると、突然後頭部を大きな手でがしっと掴まれた。

なんだ? 怒らせたか?
頭を固定され、ベリアスの顔が間近に迫ってくる。
獲物を狩る獅子のごとく金の瞳に見つめられーーむちゅっと唇を奪われた。

「ん、ンンッ!」

力強く口が押し付けられ、すぐに柔らかい舌が隙間からねじ込まれる。
不意を突かれた俺は、ベリアスの腕にぎゅうっとしがみついた。
その後は意外すぎるほど優しく、丹念に中をなぞられた。

「んぅ、む……ぁ、ふ……」

この男、こんな熱い口づけをするのか。
体の芯からぐらりと崩れていき、背中を逞しい腕に支えられる。

俺にキスをしてきた男なんて、兄上を筆頭に数えるほどしかいない。
驚きと快感が相まって、忘れられない瞬間となった。 

「なに……なんで……?」
「ルニア。この方法でも精気を食らえるのか」

ぼうっとする俺に浴びせられた、真剣な問いに我に返る。
精気?
そうだったのか。納得した俺は頭を頷けた。

「ああ。量は少ないけどな。無いよりマシだ」
「そうか。じゃあこれから一日一回、してやるよ」

熱烈な交わりの余韻をかき消すように、ぶっきらぼうに言い放たれる。
けれど何故だろう? ドクドクと胸が高鳴った。

キスで精気を与えられるなんて、真っ赤な嘘なのに。
目の前の男はすっかり信じ込んでいる。

騙してでも求めてしまうほど、ベリアスの口づけは、痺れるぐらいに気持ち良かったのだ。







それから毎日、俺はベリアスとちゅっちゅしていた。
変な関係だ。
この騎士は見事に俺の体に触れてこない。
けれどキスのほうは、自然と激しさが増していく。

あの日以来、俺はなぜか騎士団敷地内にあるベリアスの部屋へと移された。
さすが団長とも言えるだだっ広い住居で、奇妙な共同生活が始まった。

コウモリの俺は、朝昼のうちは高さのあるベッドの下で、木枠にぶら下がり休んでいる。
けれど今朝は、眠っているベリアスの胸板に小さな羽を広げ、ぺたりとくっついていた。

俺が自力で破った淫紋は再び新しく施され、下腹部に刻まれている。
そのせいか一時的に力が弱まり、ベッドの上では人化出来なくなっていた。

ーーかと思っていた。
だがそれは、どうやら俺の思い過ごしだったようだ!


「っあぁ、ん、んぁっ、出るぅ……!」

人型となり、ついでに全裸でベリアスの上に跨っている。
この男、忘れっぽいのだろうか。
性懲りもなく、寝るときは下着一枚つけていない。

事前に術をかけ、チャンスとばかりにぶっかけタイムを満喫する。

びちゃっ!
自然美に溢れた腹の割れ目に、俺の精液が滴り落ちる。
浅黒い肌に白い液。まさに絶妙なコントラストといえよう!

「おい。お前……俺の腹に、何した?」

ぱちりと目を開けたベリアスが、怒りの表情でお目覚めだ。
鋭い目つきで睨まれ、達したばかりなのにムクムクと自身が起立しそうになる。

「あー、おはようベリアス。俺は今からすっきり寝るけど、あんたは朝早いだろ。起こしてやったんだよ」
「……お前は、阿呆なのか?」
「だってあんたが俺に触ってくれないからだろ。ほら、したくなんねえ?」

腰をぐいぐいすり寄せるが、ベリアスは無視して起き上がった。
不機嫌そうに眉間に皺を寄せ、こびりついた精液を布で拭き取ってくれている。

うん。朝から眼福眼福!

「ルニア。暇なんだろ。俺と一緒に来い」
「はぁ? どういう風の吹き回しだよ。あんた、ずっと俺のこと閉じ込めてんのに」

文句を垂れつつ、俺は夜になると時折こっそり部屋を抜け出していた。
宿舎で眠っているそこらへんの騎士たちから、ちょびっとずつ精気を貰うためだ。
淫紋の定着のせいで、本気モードでは襲えなかったが。

「お前を一人にすると、何をしでかすか分からないからな。俺が肌身離さず持っててやるよ」

ベリアスが珍しく、にやりと不敵な笑みを見せた。
野性味溢れる全裸でそんな事を言われれば、たちまちノックアウトである。

妄想を繰り広げ夢見心地でベッドに座る俺を、ベリアスが不思議そうに見下ろしてきた。

「なんだ、不満か?」
「……いや。そんな事は、ない」
「そうか。ならいいんだけどな。大人しくしてろよ」

ベリアスは念を押すように言うと、俺の顎を手のひらで上向かせ、唇を近づけた。
角度をつけ、朝からねっとり濃厚なキスを与えられる。

「ん、ふ……っ」

舌先がじんじんする。
口だけなのに、全身が熱に覆われていく。

「お前、だらしねえ顔してるぞ」

長い接吻を終え、男臭い口調とともに、ふっと騎士が笑った。
俺の心臓がキリキリと叫びを上げ始める。

ああ、どうしてこの男は俺を抱いてくれないんだ!
欲望を引き出したいのに、なぜ叶わない?

こいつの目的は、一体なんなんだーー

もはや混乱と渇望で、爆発しそうになる。
こうして俺は悶々と欲求を抱えたまま、その日からベリアスの黒ローブの中に潜み、行動を共にするようになった。



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