騎士団員おいしい。 | ナノ


▼ 0 プロローグ 兄上の命令

闇の中にゆらめくロウソクの炎。
大きな寝台を囲むそれは、俺の上に覆いかぶさる男の銀髪を、ちらちらと照らし出している。

「ルニア。もっと腰を引け。それでは締めつけが足りん」
「あ、ああッ、もう無理です、兄上!」
「父上に伯父上、兄弟達まで咥え込んだお前が何を言う、淫売が」
「ああぁぁっもっと言って下さい……!」

俺の懇願をあざ笑う吐息が吐かれる。
冷たい態度とは裏腹に、動きを止めたはずの肉棒はビクビクと熱く体内をうごめいている。

快楽責めと寸止めの繰り返しーー我が家に伝わる性技の基本である。

「も、もうイク……っ」
「私がいいと言うまで達するな」
「は、はいいいい!」

言いながら盛大に精を放つ。
俺と兄上の硬い腹筋の間にびちゃっと白濁液が散らばった。
あ、しまった。許されてないのに射精しちゃった。

呆れる事さえしない無慈悲な瞳が醜態を見下ろしている。
そんな目で見つめられたら俺またイキそう!

「お前に言いたいことがある」

再び徐々に穿ちながら冷たい声が響く。地を這う低音ボイスに全身がとろけそうになる。

「うぁっ、ああっ、はあっ、な、何ですか兄上」
「お前には淫魔としての経験が足りない」

こんな時にお説教なのだろうか。
俺は下級の淫魔ではないが、兄上は行為の最中にわざと罵りワードを使用するのだ。

快楽に追いやられながら話半分で聞いてみるとする。
しかし突如発せられた台詞に頭をぐわんと揺さぶられた。

「お前の体を……あらゆる人間の男の精気で満たしてこい」
「はい?」

聞き間違いかと思われた。
我が家は魔界を支配する魔王に代々仕える公爵家、人間の精を食らう下等色情魔の真似ごとをしろとはーー

それなんてご褒美状態だ。
一瞬で全身の血が沸き立ち、覚醒したかのような感覚に陥る。

末子である俺は男系の家族全員から可愛がられる、いわゆる箱入り息子だった。
幼い頃から性の英才教育を受け、みごと淫欲にまみれた悪魔として成長を遂げた。

中でも夜毎、こうして長兄による愛欲を一身に受け、満ち足りていたのだが。
やはり血の繋がらない男も知ってみたい、というのが本音である。

しかしここは一旦、健気で一途な弟を演じなければ。

「そ、そんな、俺は兄上以外の男の精液なぞ必要ありません! どうか一生俺を囲ってください!」
「安心しろ。行く行くはそのつもりだ。だがお前にも経験が必要だろう?」

さらに深くを突きながら、紫紺の瞳を微笑みで歪める。

「……もっと私を楽しませるためにな」
「あっあっ、んあぁぁッ」

はい。楽しませてみせますとも!
他の男にぐちょんぐちょんにヤラれてきますから!

つい喘ぎと共に心の声が漏れ出そうになる。

「ですが兄上、一体どうすればーー」
「地上へ行け。人間の男の精気を集め、さらに私好みの淫靡な肉体を作るがいい。終わるまで戻ってくるなよ」
「ええ!? なぜそんな冷たいことを……俺は兄上のチンポなしじゃ生きていけないッ」
「そんな事は分かっている。だからこそ試練になるのだろう」

指先で頬をなぞり、舌でねっとりと口内を撫で回す。

ああ、気持ちいい。
幼少時から極上の快楽を与えてくれた兄上。

本当にこの極太チンポとお別れしなきゃならないというのか。
地上へ降りるのは胸が踊るが、慣れ親しんだモノとの別離はつらい。

「ルニア……いいな? 私の言うとおりにしろ」
「は、はい、あ、ああああぁぁぁっ」

何度目か分からぬ絶頂を迎え、俺は白目を剥きながら兄上の命令を受け入れた。



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