騎士団員おいしい。 | ナノ


▼ 1 獲物、見つけた

魔界から地上へ降りて、およそ一ヶ月が過ぎた。
外出するときは常に従者か使い魔と一緒だった俺は、いまや一人ぼっち。
無論、この単独行動も「可愛い子には旅をさせよ」精神を内にはらむ兄上の愛情に他ならない。

朝夕はコウモリに変化し、人里離れた洞窟で休んでいる。
人間が寝ている夜は、暗闇を好み魔力が増幅する魔族にとって、夜這いをするのに好都合だ。

兄上に命じられた通り、毎日人間の男の精気を味見してまわっている。
好みの体格や味を調べているうちに、いつのまにか地図化出来ていた。

昨日やっと街の川沿いを制覇したから、今日は裏通りにしよう。
闇に紛れ小さな翼をはためかせ、目的地へと飛んでいく。

やがて見つけた宿屋の一角から、直感的に野性的な匂いがした。
ふんふん……
これは俺の好きなマッチョの気配!

テンションを上げて狙った室内へと忍び込んだ。

寝台に大きな男が仰向けで寝ている。
しかも全裸だ。下半身のちょうどいいとこを隠すようにシーツがかけられている。

浅黒い肌に広い肩幅、腹筋バキバキ。
俺の目に狂いはなかった。よだれを拭いながら近づいていく。

脇に立てかけられた大剣が目に入る。
この男、戦士か傭兵か、または騎士か。

まさしく俺の大好物といえよう。
あらかじめ気配を消し、男の額に手をかざし覚醒を防ぐ魔法を施す。

「……ッ」

男は眉間に皺をよせ、わずかに拒絶反応を見せた。
なんだ? 感覚が異常に鋭いらしい。
たまにこういうタイプがいる。

さっとシーツを払い、膝の上にまたがる。太ももが張っていて素晴らしい!
目線の先にあったのは、で、でかい……こいつのチンポでか過ぎ。
平常時でこれって。兄上に引けをとらない逸物といえる。

期待に鼻を膨らませ、まずは射精の準備を始める。
男のではない、俺のだ。

「く、うぁ、あぁっ」

地上へ降りてからというもの、俺はぶっかけにハマっていた。
高貴なる魔族は肌を精液で汚されることを嫌う。兄上にも事故的に何度もかけてしまい、その度にお仕置きをされた。
反動なのか鬱憤が溜まっていたのか、地上へ来て以降、俺は悪魔らしく己の欲望に身を任せていた。

逞しい男の裸体を前に自慰に耽けるひととき。これだけで来た甲斐があった。
しかしやはりすぐに出してしまう。

「あああぁぁッ」

男の腹に精を撒き散らす。
もうベットベトだ。寝ていて無反応なのが惜しい。

精気を奪う方法は様々だ。
今やったぶっかけ、相手のを飲み干す精飲、身体を繋げる交接などがある。

男は勃起していた。魔法による淫らな夢のせいだろう。
実は俺は、地上へ降りてからというもの、最も多くの精気をもたらす交接をまだ果たしていない。

兄上に操を立てているなどという話ではなく、やはり最初は納得のいくデカブツの持ち主とヤりたい。
悪魔らしからぬ情熱だが、その一心で今日まで頑張ってきた。

今こそこの男を喰らい尽くすのだ!

自由自在にとろとろほぐれた秘部へとあてがう。
ぐちゅっと腰を落とした。

あっ、あぁっ、すごい、中が他の男のモノでいっぱいになっている。

腰を上下させ、入れて出しての反復を行う。
うぐ、これは良い、こいつにして正解だった。
兄上、俺は今最高のチンポを見つけました!

『良かったな。淫売』

血の通わない微笑みとともに兄上の罵声が脳内に響く。
はい。感動で涙が出そうです!

騎乗位によがり狂っていると、男の腹筋がぐっと仰け反った。
ん?
なぜ動くことが出来る。

驚くべきことに、そいつはゆっくりと瞳を開けた。
信じられない。こいつ起きやがった。
裸でまたがっている俺を見て、驚愕に目を見開いている。

しかし悪魔は窮地に陥ろうと、表面的には焦ったりしない。
今は快楽を享受している最中、なおさらだ。

「あー……珍しいな。あんた、どうやって目覚ましたんだ?」

平静を装う俺の問いに対し、瞬きひとつしなかった男が微かに口を震わせた。

「お前、俺の上で何をしてるんだ」
「……くく、見てわかんねえ? セックスに決まってんだろ」

呆けた男の顔が面白くて、つい素で話しかけてしまう。

男は褐色まじりの短い金髪に、同じく金色の瞳をしていた。
精悍な顔つき、野性味あふれる鋭い眼差しーー咥え込んだままの股間がずくりと疼き出す。

「セックスだ……?」

のっそり起きようとする体を片手で押さえつける。
ちょっと待て。まだ俺はイッてない。
ここで止めるわけにはいかないんだよお兄さん!

見下ろしていると凄まじい目つきで睨まれた。

「お前、人間じゃないな。夢魔だろう」
「正確には違うが、まあいい。なあ、どんな夢見た? 良かったら教えてくれ。オカズにするから」
「くだらない事を喋るな。……悪魔に言っても無駄か」

俺の挑発にもまったく乗ってこない。入ったままだというのに無表情を貫いている。
稀にみる強靭な精神力だ。
この一ヶ月、人間の男はちょっと刺激を与えてやると、皆すぐに暴発していた。

うん。余計にムラムラする。
この男、絶対に美味しい。精液、必ずモノにしてやるぞ!

「つれない野郎だ。こんなに硬くして、ほんとは俺の中でイキたいんだろ?」

今こそ性技を見せてやるとばかりにぎゅうぎゅう締め付けてやる。

「……ッく」

わずかに漏れる声に耳を澄ませる。
良い声だ。男の喘ぎは良い。
とくに普段はおくびにも出さないだろうマッチョな男の痴態ともなれば。

「ほら、あんたのギッチギチ。一緒にイこうぜ、お兄さん」

男はチッと舌を打った。
律動を始めた俺の腰をがしっと押さえつけ、そのまま体位を変えて反対側に押し倒してきた。

おおおっ?
やる気になってくれたのか!

「お前、名は何と言う」
「ルニアだ。あんたは?」
「……悪魔のわりに素直な奴だな。それは真名か」
「そうだ。なあ、あんたの名前は?」

しつこく尋ねると、男は溜息を吐いた。
と同時に腰をぐっと深く入れる。

「あっうぁぁっ、す、すごいッ」
「俺はべリアスだ。お前、俺の精気が欲しいのか」
「ほ、欲しい、あんたの精気、欲しい……!」
「一度だけならくれてやる。尾を出せ」

穿ちながらの要求に耳を疑う。
俺の尾をどうするつもりだ?
普段は黒い角と尾はしまってある。けれど男の命令口調と冷やかな表情にドキドキした俺は、すぐに敗北する。

尻尾をそろっと出現させると、べリアスはそれを無遠慮に手のひらで鷲掴んだ。

「んあぁぁッ」

合点がいった。そういうプレイがお好みか。
俺の尾は性感帯でありながら触手的な動きも出来る。
ぐいぐい引っ張られ、中をぬちゅぬちゅ掻き回され、だんだん目の焦点が合わなくなってくる。

「あ、あんたのチンポすげえ、べリアス、もっと激しく、奥突いてくれッ」

気持ちいい、もうイク、すごい、出して!
絶え間ない快楽の中叫んでいると、男は初めて口角を吊り上げた。

「望み通り出してやるよ、ルニア」

にやりと笑う男と目が合い、体内にドバドバと精が吐き出された。
ねっとりと濃い味わい、まさに闘う男の精液だ。
親族でない者に満たされる背徳が全身を駆け巡る。

ああ、美味すぎる……

けれど余韻に浸る余裕はなかった。
べリアスは尾を掴んだまま、詠唱を始めた。

「なに……?」

気がつくと、体に力が入らなくなっている。
べリアスは俺の下腹部に手を当て、まばゆい青い光とともに、みるみるうちに空中に紋章を浮かび上がらせた。

ーーこれはまずい。この男、ただの剣士ではないらしい。

「動くな淫魔。お前は俺が捕獲した。今から俺の所有物となる。まずは騎士団に連れて帰り、団員に見せてやろう」

吐き捨てるように言い、尻尾を掴み上げた。
途端、「んあぁぁッ」という歓びに満ちた俺の悲鳴がこだまする。

兄上、俺は大変なことになってしまいました。
けれど期待に胸の高鳴りを抑えることが出来ない! 俺はやっぱり貴方のいうとおり淫売なのです!



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