I'm so happy | ナノ


▼ 29 元通り ※

豪華宿へ戻ってきた俺は、オズと合流をし、ロイザも入れて三人部屋に滞在することが出来た。でも夜はやはり弟に会いに行こうと、建物の高層階へ向かう。

弟子は団長のクレッドが司教との食事会や会合などで早速忙しくしてると言ってたが、部屋も教えてもらったので簡単に入れた。

「兄貴……!」
「よっ、来たぜ。お疲れさん」

照れから明るく言うと、すぐに弟に手を引かれ室内へと招かれる。さすが最高幹部の部屋だ。内装から家具まで洗練された空間が広がるが、視界はクレッドの胸に遮られる。

「むぅっ、くるじっ」
「我慢してくれ。何週間ぶりだ。本当に二人きりなの」

独り言のようにこぼし、俺の腰を両手でそのまま持ち上げる。成人男性だから止めろと言いたかったが、部屋の中央にあるベッドに連れられ、熱い口づけを受けたまま押し倒され、流れに流されていく。

「おい! 切羽詰まりすぎだろお前、あれか、運動してないからか? 溜ってんのか?」
「ムードがないぞ、兄貴。運動は確かに出来てない、でも今からするだろ?」

弟の蒼い瞳は熱っぽく告げるが目が据わっている。あっという間に上半身を脱がされ、俺も露わになったクレッドの肉体に目を見張った。

「その割にはすげえいい体だな、絞ってるみたいだ。武闘家みたいだぞ」
「……そうか? 少し焼けたか。心労がたたって若干痩せたかな」

悪戯っぽく笑われるも俺は真面目に受け取り心配した。痩せてはないがさらに引き締まってると思いながら、奴の腹筋をもどかしく触る。

「冗談だよ。そんな顔するな。兄貴に会えなくて寂しかったってことだ」

俺はぱっと顔を上げて、安堵したように微笑む弟と見つめ合った。自分もだと答えると、奴ははにかみ、でもすぐにキリッと凛々しい顔つきでこう言う。

「今日はずっと俺と一緒にいるんだぞ。誰の邪魔も入らせない。朝まで」

そのやや厳しめな言い分と拗ねたような表情が可愛く、俺は大人しく受け入れるしかなくなった。




しかし、毎度のことながら後悔する。
俺はいつになったら、弟のことを侮るのをやめるのか。ことベッドの中に関して。

ここに来てからどのぐらい時間が経ったのだろう。薄暗く互いの肌と汗しか見えない距離で、俺は弟に抱かれ続けていた。

今も片手を頭の上に上げ、もう片方は奴の金髪を力なく撫でていたが、奴の顔が肌から離れ下のほうに行くと、だらけた脚を開き、半開きの口で吐息をもらしていた。

「ぅっ……あ……んぁ……」

俺のを咥え、やらしい愛撫を与えてくる弟にされるがまま、もう力も出ない。だが奴の指がそこにそろっと入ってきたとき、過敏に反応した。

「あぁ!」
「……兄貴、すごいとろとろだ……」
「お前がっ……出したからだろ……! 掻き出せよ…っ」

息も絶え絶えに訴えると、俺が快感を得ていることに喜びながら、クレッドも言う通りにする。長い指が巧みに動かされ、俺は性懲りもなくまた腰を跳ねさせる。

「や、やめ、あ、ぁあ」
「やめたほうがいいのか? それとも、もっと欲しい?」
「……んっ、あ、なに、……んぁぁっ」

達してるそばから、奴は答えは知ってると言わんばかりに上体を起こし、俺の上に覆い被さるように密着してきた。

「クレッド……」
「入れるよ? ……兄貴」

奴の硬いものがそこに充てがわれ、ゆっくりと先っぽが入ってくる。俺は目の焦点が合わなくなり、口を開けたまま奴の体にゆさゆさと揺らされた。

濡れた部分から卑猥な音が響き、奴の腰の動きも、中を気持ちよく掻き混ぜてくる性器も、俺の全てを惑わせる。

「あ! あぁ! い、いくっ、やぁっ、んぁあっ!」
「イッて、ほら、ここもっと、してあげる」

激しくなる律動にされるがまま、幾度も打ち付けられてビクビクと下半身が跳ね上がる。
クレッドはぎゅうっと抱きしめてきて、俺がイッてるのを熱が広がる全身で確かめてるようだった。

しばらく抱き合ったまま、俺は奴に目で訴える。

「も、もう無理……」
「どうして? まだ一回しかイッてない」
「……それはお前だけだっ」

弱々しく突っ込むと、奴は許されると思ってるのか可愛らしく笑い視線を合わせた。

「わかったよ。じゃあ後ろからしていいか?」

何がじゃあなのか依然として分からないが、それは奴のお気に入りの体勢だと知っているため、俺も譲歩して頷いた。

俺だって別に反対してるわけじゃない。もっとしたいし。
だがこいつはいつにも増して、俺をイカせることに専念しているフシがある。

「お前もイクんだぞ」
「……わかったけど、なんでそんな言い方……終わりたいのか?」
「ちげーよっ」

切れると笑い声が聞こえきて憎らしい。
クレッドは俺の上にまた容赦なくのしかかってきて、背後から挿入してきた。

「んっ、くっ、ぅっ」

背を大きな胸板に抱きこまれ、腰が隙間なく密着したまま動かされる。奥まで入ってきてかなりやばい。
俺は声が変になるのを抑えながら、枕に掴まって全身への快楽を受け続けた。

動きはまた激しくなり、先にイクものかと耐えていると、クレッドの逞しい腕は俺の肩下に回り込み、余計に近くに抱きしめられる。

「兄貴」
「んえっ?」

情けない声を出した口は、そっと後ろへ向けさせられ、奴の唇に重ねられる。
舌がからみ合い吸われて、口とあそことで快感が何倍にも膨らんでいく。

「あっ、ぁあ、ん、あぁっ」

バックで突かれていると、突然弟の様子が変わった。
首筋を甘噛みしてきて、激しく吸い付いてくる。
奴の噛み癖には、短期間ではあるものの若干のトラウマが蘇ってきて体がビクつく。

「おい、クレッドっ」
「……どうやって寝たんだ?」
「えっ?」
「あいつと、どんな風に眠った?」

ちょ、今聞くことかと混乱と目眩が襲ってくるものの、きっとずっと気にしていたのかもしれないと即座に反省し、俺はこんな体勢で真摯に答えようとする。

「えっと、その、ただの抱きまくら…的な感じで…っ」
「……なんだって? 兄貴は抱きまくらじゃない、俺の愛する人だッ」

はっきりと嫉妬ばりばりで反応されるものの、今お前抱きまくらよりひどい扱いしてるからなと思ったのを飲み込む。

「う、ぅ、許して、くれぇっ」
「兄貴のせいじゃない、あいつが悪いんだッ」

怒りなのか優しさなのか、奴の抱擁と責めが俺を追い立てる。このままじゃまたイク、そう思っていると、後ろの弟が腰を不規則に震わせた。

中にドクドクと流れ込んでくるのが、脱力した体で感じる。

「はあ、はあっ、くそ……っ」

クレッドは俺の上に倒れ込み、最後の一滴を出し切るまで荒い息を吐いていた。
こいつも達したのはよかったが、俺はどこか腑に落ちない思いで振り返る。

「え…? お前怒りながらイッたの? それ、どういうこと?」
「……えっ? 違う、なんだ怒りながらって」

弟は息を整え、ゆっくりと体を離す。だがすぐに俺を優しく反転させ、隣に寝転がると腕の中にきっちりと包んだ。

俺は目が開いていた。じっと横目を奴にやる。

「……ほんとに違うぞ。怒りが湧いたのは事実だが、ずっとイクのを我慢してて、気持ちよさと色んな気持ちが溢れ出て、つい出してしまった。そういう感じだ。だから、まあ兄貴のせいだ」

冷静に告げられて俺も納得しそうになる。
よく分からんが、俺のせいということにしておこう。

「なんで我慢するんだ? 俺別にお前が何回出してもいいぞ。掻き出してくれれば」
「……兄貴。一応ムードが……。まぁいいか。自制してただけだよ。冷静になろうとして」

奴の言葉を考える。たぶんずっと気になってたことを知りたかったのだろう。
完全に俺のせいだし悩ませて申し訳ないが、胸がきゅっとなってくる。

「クレッド……もう一緒にいるぞ。あともうすぐ一緒に住むんだからな。そしたら毎日一緒に寝れるだろ」

奴の短くなった金髪を撫でながら話しかける。
するとくすぐったそうに笑い、こくりと頷いた。かと思ったら、弟の顔がわずかに曇りだす。

「そうだ、その話なんだが……」
「なんだよ? やっぱりやだとか言うなよ。俺へこむぞ。いやそんなもんじゃ済まないぞ」
「違うよ。それはめちゃくちゃ楽しみにしてる。そうじゃなくて……俺の勘違いだったらあれなんだけど……」

クレッドが若干言いにくそうに尋ねた内容に俺はドキリとした。

「もしかして兄貴、お金が必要って、その引っ越しとか新居のためか?」
「あ!! それは……えっとな」

すぐに否定すればいいのに上手く嘘がつけず、俺は明後日の方向を見た。だがクレッドに頬をむぎゅっと挟まれ、視線を合わせられる。

「やっぱり、そうだったのか。だから急に任務を上限まで引っ張り上げたのか」
「え、あれ上限なの? やべえじゃん。俺そこまで司祭に頼んでねえぞ」

つい司祭に直談判したことまで白状してしまったら、弟は困り顔になった。

「分かった分かった、言うなよ。一人でやろうとするなってことだろ、でもこれも俺のプライドだから。お前にすっげえ良い家をプレゼントしたいんだ、一生二人で住むんだからな」

正確にはプラス一匹か、と思いつつ宣言する。
するとクレッドは瞳を柔らかくして見つめてきた。
 
「兄貴……すごく嬉しいよ。ありがとうな。でも俺も同じ気持ちだって言ったらどうする?」
「だめだ」
「だめだって、そんな……厳しくないか」
「いや俺のほうが兄貴だから。万が一お前が出したいっつっても俺のほうがかなり多く出す」

給料や地位の差は隠しきれない。そして弟の男気を考えるとそれすらもこいつはつっぱねる可能性がある。それは何としてでも防ぎたかった。

「そうか……分かったよ。じゃあ半々にしよう、とりあえず」
「え、まじ? あ、いや、俺のほうが出すけどね」

つい素が出てごまかし笑いをする。

「お金のことは後からにするとして、まず色々考えを出し合わないとな。兄貴はどんな家に住みたいんだ? どんな暮らしがいい?」
「そうだなぁ。俺はとくにすっげえ豪邸に住みたいとか無いんだわ。一軒家がいいけど、こじんまりしてても全然いいし。あ、でも部屋数はわりといるよな。互いの仕事場も作らねえと。……あと自然がやっぱ見えるのがいいな、星が綺麗でさーー」

気づけばすごい注文をつけていた。だが弟は真摯に聞いてくれ、笑顔で頷いてくれる。奴にも意見を求めると、概ね同意された。

「俺もそんな感じだな。十分な広さは正直欲しいが、あまりに華美な作りは必要ないと思う。そこは兄貴の好みにしよう。たぶん、いや絶対兄貴のほうが俺よりセンスがあるからな。あとはーー」

二人で布団に潜り込み、話をすることがすごく楽しい。
もうすぐ動き出すんだなと実感する。

「よし、じゃあ近いうち物件見に行こうぜ!」
「ああ。楽しみだ。……あ、でも待てよ。その前に今ある家のことを整理したほうがいいよな。俺もあの家は売るつもりはないんだが」

そう言い考える素振りをする。クレッドは今の三階建ての家を手放す予定はないらしく、なんでも部下たちとの集まりなどに使いたいらしい。

「呼べばいいじゃん、俺達の家に。いまさら二人で住んでも何も思わないだろあいつらなら」
「絶対に嫌だ。どう思われてもいいが二人だけの家には呼びたくない」

きっぱりと言われ苦笑をする。確かに平穏な日常を普通にぶっ壊してくる奴らだからな、用心に越したことはないのかもしれない。

では残りは森にある俺の自宅だ。今は騎士団領内の仮住まいに住んでいるが、あそこもどうにかしないとな。その為にはあの男と話さなきゃいけないんだが。

「はあ……」
「ん? どうしたんだ兄貴」
「あのおっさんだよ。やっぱ一回伺いを立てないとな…」

弟の体にもたれながら英気を養う。すると心配げに見下された。

「俺も行こうか?」
「いや、大丈夫。とりあえず一人で行ってくるわ、面倒くさいけど」

こいつがまたいびられたら可哀想だと思い、俺はひとり決意をする。また一歩夢に向かって踏み出すために。



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