ハイデル兄弟 | ナノ


▼ 95 新たな試み ※

媚薬を盛られた俺は、今まさにクレッドの手に自身の体をまさぐらせ、誘惑している最中だった。
ベッドで上に覆い被さっている弟に、はぁはぁ言いながら腰をこすりつけてしまう。

「んぁ……もっと、触ってえ……」
「……兄貴、これ以上したら、駄目だ」
「やだ……お願い、声がまんするから…」
「……出来るの? 今もえっちな声、出してるのに」

意地悪く目を細めたクレッドが、さらに体を寄せ、耳元で囁いてきた。
びくん、と俺は胸をのけぞらせる。

早く肌を合わせたくてしかたがない。こんなに火照ってるのに、服が邪魔だ。

俺は弟の背に回した手を、奴のシャツの下に潜り込ませた。

「クレッド、なぁ脱いで」
「……ん? どうしようかな」

人の胸をいじりながら、なぜか楽しんでいるような声音だ。

こいつ、余裕みたいだな…俺の状況わかってんのか?? マジしゃれになんねーんだぞっ。

「もういい。俺が脱がせる」

男らしく宣言するものの、誰かみたいにボタンをすんなり外せない。
だがクレッドはまじまじと俺を見つめながら、律儀に待っていた。

その熱を帯びた視線すら、今の俺は過剰に意識してしまう。

筋肉のはった胸筋が現れ、手を這わせてなでる。
すると弟が俺の上でわずかに息づいた。

「……っ兄貴」
「舐めていい?」
「ちょ、だめ、だ」

少し下にずれて奴の乳首を口に含んだ。
やさしく吸ってみたり、舌先で舐めたりすると、弟が小さく声を漏らし始めた。

俺、なんか変だ。
こうしていると体の内側が熱くなって、余計に興奮が増してくる。

「……はぁ……っ…兄貴、もう、いいよ」

耐えきれずゆっくり上体を起こしたクレッドが、俺の隣に横たわり、頬にそっと手を伸ばしてきた。

「なんで…? もっとしたい、俺」

すかさず弟の脇に寄り、今度は俺が半分奴に覆い被さる。
奴のびっくりした顔が目に入った。

また白い肌に唇を這わせる。
ちゅ、ちゅ、と細かい音を出し、大事にキスしていく。

腹のあたりまで落としていき、へそをゆっくり舐めた。すると弟が肘をついて、また起き上がろうとした。

「おい、兄貴、ちょっと」
「……なんだよ?」

完全に起きて座った状態のクレッドを見上げる。
また困った顔だ。
頬はほんのり染まったままで、上気しているのに。

「兄貴……すごく興奮してるみたいだ。いつもと、違うよな」
「……うん。変なんだって、今…我慢できない」
「いや、そうじゃなくて……感じが違うだろ? 俺の、やつと」

控えめに尋ねられたが、その一言で俺は急激に、大きな羞恥に飲まれそうになる。

確かにこいつの媚薬とは異なっている。あれは単なる興奮というより、もっと内側から、乱れに乱れてしまう系だ。

「俺のとどう違う?」

どこか真剣な顔を寄せて、髪を優しくとかれる。全然質問に集中できない。

「どうって……お前のほうが……ずっと気持ちいいよ」

率直に答えたら、クレッドは突然自らの顔を手のひらで覆った。そのまま数秒黙っている。

「だって、種類が違うだろ……量も……。それに、あれは特別だから……愛し合った末にそうなるわけで……」

俺は媚薬に侵されながら、一体何を喋らされているんだろう。
ぐるぐる熱に混じりながら考えているうちに、弟の両腕に抱き締められる。

ぎゅうっと力を込められ、苦しい。

「そうだな。……兄貴。俺は今、葛藤してるんだ。俺の大事な人をこんな目に合わせた奴は、間違いなく許せない。でもこのままにしておくことも、出来ないよ」

苦しそうに言う弟には申し訳ないが、その言葉に、俺の胸は自然と高鳴ってしまう。

「じゃあ抱いて、クレッド……お前がそんな話するから、俺、もっと……したくなっちゃった」

腕に掴まって懇願する。
奴の固まった表情で分かった。今度こそ困り果てていると。

だがまれにみる積極性は、もはや自分の力じゃ治まらないのだ。

「兄貴……っ。俺も愛し合いたいよ。でも、今の状況とかよりも、兄貴の体に悪い影響が出たら、駄目だ。それが一番心配だから」

たぶん媚薬を掛け合わせることを懸念しているのだろう。
でもそんなの平気だ。
俺は自らの感覚に対し、変な自信があった。

「やだ。して」
「今夜は我慢しよう、兄貴。触り合いっこならいいよ」
「……それだけじゃ足りない。一回だけ、いいだろ」

俺たちはいつも、二人して譲らないのだ。
というかこういう状況、今までも数回あった気がする。
だが今回は、俺のほうがギリギリというか切羽詰まっている。

「兄貴の気持ちは分かるけど、その、やっぱり難しいな。……そうだ。俺が兄貴の……していい?」
「どうやって?」
「うーん。何でもしてあげるよ」

ちゅっと頬にキスをされて、微笑まれる。
単純な俺は夢見心地でぽーっとした。

しかし今は、俺が行動を見せたいのだ。

「俺がする。お前の。いい?」
「……えっ。嬉しいけど、大丈夫だよ。兄貴が大変なんだから、俺にさせて」

またこれだ。
こいつは俺が積極性を見せると、腰を引く傾向がある。

まぁ任務中だから当たり前なのだが。そうだここ家じゃないんだぞ。

その後しばらく押し問答が続いた頃、クレッドがとんでもないことを言い出したのだった。

「じゃあ、一緒にする……?」

興奮した顔つきのクレッドが尋ねる。
意味がすぐに理解できなかった。

「え? なにを?」
「だから、一緒に……舐める?」

さらりと述べる奴の口元を見て、血の気が引いた。
ちょっと待てよ。何を言い出すんだ?

「い、意味わかんない。なんだそれ」
「分かんない? 兄貴が俺の上で足のほうに頭を向けて寝そべって、俺が兄貴のーー」
「やめろばか!! 変態へんたい変態っっ」

声を荒げた俺は、また弟の手に口を塞がれた。

こいつやっぱり頭がおかしい。俺と違って何も飲んでないのに。

「なぁ、だめ…? 兄貴」

腰を持たれて、首筋に口を寄せる。
軽いキスを何度か落とされ、熱が簡単に戻ってくる。

一瞬考えが揺らぐ。

だってそれって、同時に、お互いのものをアレするってことだろ…?
そんな卑猥な行為……恥ずかしすぎて、出来るわけーー

「そうだよな。ごめん兄貴、大胆なこと言っちゃって……こんな場所ですることじゃないよな。初めてなのに、もったいないし」

苦笑して背をなでられる。
いやそういう問題じゃないだろ。どこでも無理だろ。

「じゃあやっぱり俺にまかせて。おいで、兄貴」

弟の優しい声に気持ちが揺らぐが、俺はそのことが頭から離れなくなっていた。

絶対媚薬のせいだ。迷いが生じるなんて。
でも体が疼いてどうしようもない。

「や、やだ。二人で気持ちよくなるんだ」
「……じゃあ分かった。とりあえず俺の上にきてくれる?」

クレッドに誘導され、こくんと頷いた俺はなぜか奴に背を向けて、腹の上に座った。

身を屈めて、弟のズボンの上に手を這わせる。
どこか浮ついた気持ちで撫でていたが、その感触がはっきり分かると、自分の腰が自然と動いてしまう。

「してもいい……?」
「……いいよ、舐めて兄貴」

背後から声がするのが変に感じる。
下着から暴いたクレッドのものが、大きく目の前でそそりたつ。

優しく指を添え、先っぽに舌を這わせる。
しかし舐めたりキスしたり色々してるうちに、突然俺の尻に弟の手が伸びてきた。

やんわりと掴まれて、やさしく揉まれる。
気持ちよさに腰を擦りつけつつ、舌も一生懸命動かす。

だが驚きは始まったばかりだった。

「んっ……んんっ?!」

弟が俺のパンツを剥ぎ取ってきたのだ。
あらわになった尻に直に手を這わされ、俺は急いで起き上がる。

腰をひねって後ろを向こうとするが、すかさず両手で抱えられ、向き直された。

「やっ……なにすんだ! やだ!」
「兄貴、続けて。俺も一緒に気持ちよくしたい」
「…だって……見えちゃう……っ……触るだけにして……!」
「分かった分かった。触るだけな?」

弟の声に興奮がにじんでいる。
完全に信用できないまま、仕方なく俺は元の位置に戻った。

口に濡れた大きなモノをくわえながら、いつのまにか下半身を裸にして、弟の手のひらで愛撫を受けている。

すでに勃っていて苦しいものを、下から優しく撫でられて、どんどん息が上がっていく。

こんなやり方、知らない。初めてだ。

「兄貴、もう少し腰上げて」
「んっ……ふぅっ?」
「……うん、もうちょっと、そう……」

ちらりと盗み見ると、弟が上体を若干起こし、俺の腰をがっちり持った。
そしてあろうことか、股の間に顔を埋めてくる。

やばい。
マジで、何しようとしてんだこいつ。
止めてくれ、それだけは、羞恥のあまり死んでしまうーー

「だ、だめ、やだ、クレッド」
「……ん、大丈夫だ兄貴……俺にさせてくれ」
「はぁ、あぁ、ん……っ」

気がつくと俺は、自分が今しているのと同じように、弟の口に自身をくわえられていた。
濡れた舌がぬるぬると這ってきて、根本を吸われたりして、腰がくだけそうになる。

「んあっ、だめぇ、それ、あぁぁっ」
「……でも、気持ちいいだろ? 一緒にするの…」

口での愛撫の合間に、やらしい言葉をかけられる。

「ああ、兄貴……かわいい。すごくえっちだ、このポーズ……」

興奮を隠しきれない様子で、弟に自身を責められる。

くそ、俺は忘れてたんだ。
最近弟と甘々な雰囲気で過ごしていたせいか、こいつがもともと、本物の変態だったということをーー。

「はっ、あっ、クレッド、声出ちゃうから、もう離して」
「駄目だよ、まだ……もうイキそうなの?」
「……う、ぅん、い、イク、から…っ」
「じゃあ出して、兄貴……俺の口でイッて…」

きつく吸われて全身の力が抜けていく。
こいつの舌も口も、全てが信じられないほどの快感を与えてくれるということを、すでに知っているせいで。
俺はいつもごく簡単に、理性を手放してしまうのだ。

「あ、んぁ、気持ちいい、だめ……でる、クレッド、……んあぁぁっ!」

ビクビク腰をしならせて、快楽に身を預ける。
そのままくたりと弟の体の上に突っ伏した。

「はぁ、はぁ、ごめん…」
「大丈夫だよ……俺は嬉しい」

同じく息を切らせるクレッドが、穏やかな声で告げた。

ていうかなんで俺が謝るんだ? 出したのは悪いけどそもそもこいつの罠でこんなことに…。

黙っていると弟が俺の腰を持ち上げ、後ろから抱き抱えてきた。

「兄貴。体はどうだ?」
「……まだ熱い」
「本当だ。やっぱり、一回イッただけじゃ足りないのかもな…」

俺の下半身を撫でながら冷静な声が聞こえてきて、恥ずかしさと腹立たしさが混じってきた。

「そうだよ。じゃあ、最後までしよ? クレッド」
「……だから兄貴、そういう発言はいま駄目だって……俺がつらいだろ」
「バカかっ俺のほうがつらいんだぞ!」
「分かってる、ごめんな。でも始めちゃうわけにいかないだろ…?」

もう半分始まってるだろうが。
俺がめちゃくちゃな言動をしているのは分かっているが、淫らな気分が抜けないのだ。

だんだん、全部こいつが悪いんだという気になってきた。
もうどっちが弄んでるのか分からなくなるほど、この魅力的な弟のせいだ。

「じゃあお前のもう一回する。まだ出してないし」
「……くっ、……兄貴、いきなり触んないで…! ちょ、ちょっと、まっ」

気を取り直した俺は、色々再開することにした。

こんなこと、もうないだろうから。今は高揚した気分に身を任せたっていいだろう。
明日のことなんて、もう知らない。



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