▼ お兄ちゃんを治したい
「お兄ちゃん、起きてー。お母さんが朝ごはん作るって」
「んあ……わかった……。……っ、ちょっと、ルカ。そこに乗らないで」
今日は土曜日の朝。二階まで兄を起こしに行った僕は、うつぶせに眠る兄の腰に股がり、Tシャツの背中を揺さぶった。
寝ぼすけな兄のうなり声を聞いて、素直に体から降りる。すると兄はごろんと寝返りを打ち、細目で僕のことを見た。
「朝から元気だなぁ、お前……俺と遊びたいの?」
「うん!」
すぐに返事をすると、兄はベッドからゆっくり体を起こして笑う。
僕の頭を撫でながら、視線を下にやり、下着のトランクスをさっとシーツで隠した。
不審に思った僕はそれを指差して、いつも気になっていたことを尋ねる。
「お兄ちゃんのそこ、いつも朝変な形になってる。どうして?」
「……ん…? なに? 変なかたち? なってないよ」
まだ寝ぼけてるのか、隣にぺたんと座っている僕のことを、大きな体で隠すように抱き締めてきた。
でも僕はお兄ちゃんのおちんちんの場所のことを不思議に思って、じっと見つめる。
その間「お前の髪ってサラサラ。気持ちいいなぁ」とか言いながら時々するようにすうっと匂いも嗅がれたりして、何かごまかされた感じがした。
お母さんのことを思い出し、兄を階下に連れて行こうとしたけど、すぐ行くからと部屋を追い出されてしまう。
着替えてるのかな、そう思って僕は少しだけ開いた扉の隙間から、兄の姿をこっそり見ていた。
だるそうに伸びをした後、ベッドに腰をかけてTシャツを脱いでいる。そしてトランクスをズっと下に引いておちんちんを出した。
……何あれ? すごく大きくて長い。お風呂の時と全然違う。
驚いた僕はよそ見も出来ず、それを平然と右手に握る兄を見守っていた。
「……はっ……」
小さな息がもれるたびに、兄の手が忙しなく上下に動く。だんだん早くなってくると、兄が喉を反らして、引き締まったお腹もぴんと伸ばして、足を一瞬震わせた。
「く、う……ッ」
顔を赤くさせて、一番大きな声を出した時だった。
お兄ちゃんのおちんちんの先っぽから、ぴゅるぴゅるって、白いものが出るのを僕は確かにこの目に映す。
おしっこした……!
びっくりした僕は後退り、すぐにその場から逃げようとしたけど、続く兄の言葉が聞こえてきて、足を止める。
「…………あーっ……かわいい、ルカ……」
ぽつりと呟いて、兄は力が抜けたように後ろのベッドに倒れた。
……なに? どうして今僕が出てくるの?
よく分からなかったけれど、この場面を見ていたことが知られるのは良くないと思い、僕は急ぎ足で階下に向かった。
頭がすっきりしないまま、台所で料理を作ってくれている母をぼうっと見る。すると「ルカ、お皿出して!」と言われたので即座に動き僕も準備をした。
しばらくして食卓にご飯が完成した後、やっと姿を現した寝巻き姿の兄が、隣に腰を下ろした。
「ダッジ、今日私夜勤だからさ。夜ご飯頼んだわね」
「うん。分かった母ちゃん。ルカ、何食べたい?」
「えっとねー、何があるのお母さん?」
「ごめん、何にもないから後でお兄ちゃんと買い物行ってきな。甘いものも買っていいからね」
にこりと申し訳なさそうに言う母は、看護師の仕事をしていて、定期的に夜勤で家を空けることがある。
僕が小さいときに父と離婚し、女手ひとつで10才の僕と17才の兄を育ててくれた、優しくて強いお母さんだ。
僕にはお父さんはいないけれど、僕から見たら十分大人の兄と母の、何気ない会話を聞くのが好きだった。
その中心は家のことや学校のこと、そして僕のこと。大好きなこの二人がいれば、僕はいつでも安心感に包まれて暮らすことが出来た。
午後、母と一緒に家を出て二人でスーパーに向かい、食材を買った。
兄は休みの日はほとんど、僕と一緒に居てくれる。平日母がいるときは時々友達と遊んでるみたいだけど、家の中に僕が一人にならないようにしてくれて、僕はあまり寂しさを感じることなく過ごしてきた。
だから僕は、はっきり言って学校の周りの子と比べても、かなりのお兄ちゃん子だった。
「ルカ、ほんとに焼きそばでいいの?」
「うん。でもオムレツが乗ったアジア風焼きそばがいい!」
「はいはい。そんなの作れるかなぁ、俺……」
兄はぶつぶつ言いながらも、スマホでレシピを見て作ってくれた。
食卓に並んだ料理は想像以上に美味しそうで、味も抜群の美味しさで、僕は一気に幸せで満腹になった。
自分だけ紅しょうがをのっけたオムそばをすでに平らげていた兄は、にこにこしながら僕が食べ終わるのを待つ。
「ごちそうさまー! すっごく美味しかった、お兄ちゃん。ありがとう!」
お礼を言って片付けると兄は嬉しそうに微笑んで、僕のことを急に抱き上げた。
同い年の子より小さめな僕に対し、大人の中でもかなり背が高く目立つ兄に抱っこをされて目線が高くなり、びっくりして降りようとする。
「もう、離してってば、お兄ちゃんっ。僕子供じゃないから!」
「子供じゃん。なあ、一緒に風呂入る?」
「……ええっと。あとで一人で入る。行ってきていいよ」
「はっ? なんで? 嘘だろ? ……まさかもう兄離れなの? 違うよな、ルカ?」
急に切羽詰まった焦り顔で僕のことを見つめてきて、思わずぷっと吹き出しそうになった。
兄とお風呂に入るのは日課だし、僕もそうしたいけど、やることがあるのだ。
「ごめんね。僕宿題するの。あとで一緒に映画見よう、お兄ちゃん」
「……おう。いいよ。約束だぞ、ルカ」
どっちが子供か分からない渋い顔をした兄が、頼りない歩き方でようやく浴室に向かう。
それを無事見送った僕は、急いでリビングに駆け込んだ。
低いテーブルに置いてある、携帯ゲーム機を手に掴む。近くのソファに寝転び、僕はすぐにそれをインターネットに繋げた。
検索窓を開き、「お兄ちゃん おちんちん」と書く。
今日1日のほほんと楽しく兄と過ごしてきたかに見えるけど、ほんとはずっと朝の衝撃的な光景が頭から離れなかった。
しかし、検索結果は信じられないことに、ゼロだった。
……ゼロって、なんで? そんなことがあるのかな。
不思議に思いつつも、「おちんちん」だけで調べてみると、子供のその部位に関する事柄や、親らしきひとの相談みたいなのが載っていた。
これじゃあお兄ちゃんのおちんちんのことが分からない。
困り果てた僕は次に「お兄ちゃん おしっこ」とも書いてみたけど、またもや結果はゼロだった。
絶望した僕は「おしっこ 白い」で検索した。すると突然、ずらりとよく分からない病名や病気のことでページが埋め尽くされた。
……どうして? 嘘だ。
お兄ちゃん、病気なの?
ショックで頭が真っ白になり、呆然とソファに座っていると、浴室の扉がばたん、と閉まる音がした。
後ろから石鹸のいい香りと一緒に、パンツだけの兄が濡れた金髪をタオルで拭きながら現れた。
台所に入り、ペットボトルに口をつけるその姿を、僕は涙目で追った。
我慢できず立ち上がり、どすん、と後ろから腰に手を回して抱きつく。
「お兄ちゃん死んじゃやだぁ」
「……んっ? なに?」
体をこちらに向けた兄の胴にしがみついたまま、涙をこらえて見上げる。
兄は目をぱちくりと瞬かせ、飲み物をそばに置いた。
「どうしたいきなり。怖い夢でも見たか?」
「ううん。でもお兄ちゃんのおしっこ白い。病気なんだ。やだよう」
急激に悲しくなってぽろぽろ涙がこぼれてしまった。
すると僕をまた子供扱いで抱き上げた兄は、ソファに連れていってそっと下ろした。
隣に座ってじっと見ていると、困った顔つきで肩を抱き寄せられる。
「待て待て。別に普通の色なんだけど。何の話だよ? 俺は病気じゃないし、お前を残して死ぬわけないだろ?」
「……ほんとに? 嘘じゃない?」
「うん。ずーっと一緒だよ。いつも守ってやるから」
抱き締められて安心しそうになったけれど、すぐに不安が襲う。僕は正直に朝のことを話すことにした。
「でもお兄ちゃん、おちんちん触って、白いのいっぱい出てた。あれなあに?」
兄の顔が初めてひきつった。答えを求めて揺さぶると、兄は耳まで真っ赤になっていく顔を、大きな手で隠し始める。
「……お前、なんで知ってるの? もしかして、見ちゃったか?」
こくんと頷くと、さらに兄が赤面し、動いた目を逸らされた。病気じゃないみたいでよかったけど、やっぱり恥ずかしいことだったのかな。
「ごめん。変なもの見せちゃったな。気にすんな、ルカはまだ知らなくていいことだよ。大人の……あれだから」
「あれって? どうしておちんちん触るの? おしっこ出すため?」
質問責めにすると、兄は髪を掻いて止まり、また考えるような仕草をする。そして足を閉じたり開いたり、やたらとそわそわしていた。
「おしっこじゃない。だから、心配しないで。な、ルカ」
まただ。腰をいったん浮かせてパンツを隠そうとしている。
その素振りを見逃さなかった僕は、兄のパンツの真ん中に手を伸ばした。そしてむぎゅっと、掴んでみた。
「わあ、なんで? 硬いよ、お兄ちゃんの」
「……ッ! んッ、おい、なに、してんのルカ!」
僕はその感触が面白くて、つい揉むように触った。だっていつもはぶらぶらしている大きなお兄ちゃんのものが、もっと存在感を放っているように感じたのだ。
「あー……やばい……ルカ……だめ、触ったら」
途端に兄の口が半開きになり、遠くを見つめるような目つきをする。
どうしたんだろう、目元が赤いまま、はっ、はっと小さな呼吸をして、まるで朝見たときと同じみたいになってる。
「……お兄ちゃん? どうしたの……?」
「ん、あぁ、…ごめん、なんでもないよ…」
声もか細いし、何でもないようには全然見えない。なんというか、……ふにゃりと嬉しそうな顔をしている。
「ねえ、気持ちいいのお兄ちゃん。こうやって触るの」
「……えっ……あー、……うん、まあ……な」
僕はまた兄のおちんちんをきゅんきゅんと揉んでみた。すると腰がびくびく動き始めた。
「ああッ、ルカ、やめて、それ、気持ちいーからさ」
「……どうして? もっともっと大きくなってるよ、すごぉい」
「ぅあっ、あ、あ、アァッ、出そう、やべえ、手離してルカ」
「……やだよ、だって心配だもん、お兄ちゃんのここ」
お兄ちゃんてばどうしたんだろう。僕が揉むごとに変な声出してるし、本当に心配になってきた。
「我慢しろ……我慢しろ…」
頭の上から呪文のような言葉が聞こえてきて手を止めたら、兄が僕の手首をやんわり掴んだ。
結局額に汗をにじませた兄の「なっ、そろそろ映画見ようぜ」という一言によって、僕の頑張りはおしまいになってしまった。
休日の特権として、夜は兄と一緒に眠ることができる。
その日も僕は自分のより大きなベッドに潜り込み、横になる広い背中に抱きついた。
「お兄ちゃんお兄ちゃん」
「ルカぁ。まだ寝てないの? おやすみ」
後ろ手でぽんぽんと腰を叩かれる。
「遊ぼうよ」
「……俺と何して遊びたいの。もう11時だぞ。寝なさい」
親みたいな言い方をする兄が面白いけれど、僕には考えがあった。
もしかしてあそこ、さっきみたいに触ったら良くなるかな?と思ったのだ。
ときどき兄や母にやってあげている肩揉みみたいに、柔らかくなって疲れが取れるかもしれない。
「お兄ちゃんのおちんちんマッサージするの。僕得意だよ。そしたらお兄ちゃん治るよ、もう白いの出なくなるよ」
「……いや、出るよ絶対、そんなの……」
消え入りそうな声が届く。こっちに振り向かれて真剣な顔で見つめられた。
「そういうこと言っちゃダメ。あと他の変態男とかにも間違っても言うなよ? ていうか俺以外の年上の男に近づくなよ? 分かった?」
「はーい」
一度は納得したものの、目が冴えちゃって寝られない。すでにもう僕が兄を治す、という使命感が生まれていた。
「お願い、僕にさせて。お兄ちゃん……」
わがままを言うときの声を出したら、閉じていた兄の瞳が開きゆらゆらと揺れだし、抱き締められた。
「じゃあ触ってみて」
ぼそっと囁かれて、単純な僕は嬉しくなり、みるみるやる気に満ちる。
程なくして兄の息づかいが聞こえてきた。同時に抱かれる腕の力がぎゅうっと強まっていく。
「お兄ちゃん苦しいよ」
「俺も苦しい」
トランクスの上を撫でていると、兄のものはどんどん形を変えて、膨らんで硬くなる。
「あー、出そう、もうやばいよ、指離してルカ」
「だめだよ、もう少しーー」
段々夢中になってきた僕に対して、兄の様子はおかしくなってしまった。
「ああっルカぁ、もう中に出したい、お兄ちゃん出してい? 白いの出していい?」
だらしなく口を開けたままはあはあ言いながら尋ねてくる。
僕はぴたっと手を止めそうになったけど、兄の気持ち良さそうな顔を前に、冷静に考え直した。
「駄目だよ、パンツに出しちゃったらお母さんに怒られるよ」
「違うルカのパンツ」
そう言って兄はいきなり僕の半ズボンに手を伸ばした。
布団を半分取られて白いブリーフパンツが兄にさらけ出される。
「やああっ何するのお兄ちゃんっ」
「はあ、はあ、やべえ可愛い、もう我慢出来ねえ」
いつの間にか僕の上に大きな体が覆い被さってきた。
「だってお前毎日毎日可愛い尻押しつけて起こしに来てさ、そんなの無理だよもう、俺。お兄ちゃん失格だな、ごめんなルカ」
なぜか謝っているのにうっとりした顔を僕に迫らせる。
そしてキスをされた。
ちゅうっと柔らかい唇が触れて、味見してるみたいに小さくついばんでくる。
「ん、んむ」
「はあっ……ル、カ」
兄の舌にぺろっと舐め取られて全身がぞくりとした。
キスと一緒に兄の手が動き、僕のブリーフパンツの股のところを少しずらし、自分のおちんちんを中にねじ込もうとしてきた。
「ひゃあぁ、お兄ちゃぁん」
ぬるっと濡れた先っぽが僕のタマの部分を上から押すように侵入してきて、おちんちんに擦り付けてきた。
硬いものに撫でられてビクンビクンしてしまう。
「ほら、擦り合ったら気持ちよくない? ルカのちんぽは初めてだよな、こういう刺激」
「う、うん、きもち、い」
訳が分からず兄に掴まって揺さぶられる。
どうして?
さっきまで兄一人で気持ちいい顔してたのに、僕にも移っちゃったみたいだ。
「あ、くっ、もう出る、ルカ、出すぞ」
「んん、んぁ、あああっ」
ぐりっと兄の硬いものに擦られた時、がくがくと変な感覚が走った。勝手に腰が動いた後じわぁ、となにかが広がる。
でも思い返す間もなく僕のおちんちんにたくさん兄の出したものがかかった。
パンツの中がびちょびちょになってしまった。
「いっちゃった? かわいー……」
遠くを見る僕のほっぺたにちゅっと唇が触れる。
「でもまだ出てねえな? もうちょっと先かな……」
僕のおちんちんを観察しながら独り言を喋っている。
その後はにこにこしながら、好き放題にキスしてくる。
お兄ちゃんのキスは久しぶりだった。
小さい時よく口にされたけど、お母さんに虫歯移るからやめなさいと言われてからは、ほっぺただけになった。
でも今してもらったキスは、なんか違うと思う。もっと大人みたいなやつで、僕の知らないやつだった。
「ねえ、お兄ちゃんのここ、治ったのかな? 僕のと一緒にこすって、もっと良くなった?」
いきなりされたことにびっくりしたけど、僕の関心はまだまだ兄のものに向けられていた。
「……んー……まだ治んないと思う。もっとやばくなったかもしんねえ……」
一人起き上がった兄は、どこか難しい顔に戻って、自分の体と僕の体を交互に綺麗にしてくれていた。
「ええっ? こんなに頑張ったのに。じゃあ僕また、診てあげるね」
「……えっ? いいの?」
「うん。僕決めたよ。お兄ちゃんのおちんちんの先生になる!」
僕がそう宣言したとき、兄は再び瞳をキラキラさせて「俺のだけね」と抱き締めてくれた。
それからは毎日家のどこかで、内緒でキスをしたり。お兄ちゃんの治療をしたり。
それは僕が11才の時、精通を迎えるまで続けられた。でもそのあと僕は、なぜか今度は自分がお兄ちゃんの治療を受けるはめになってしまうのである。
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