三日前までは昼近くまで露店形式の市場が開かれて賑わっていた、通行人も疎らな中央広場を離れる。時折見かける希少な通行人も家路につくのだろうか、皆そそくさと走っていく。

今回の事件で既に死亡した三人は、場所は違えど人が立ち寄ることが殆ど無い路地や廃屋など、一人暮らしであれば自宅で殺害されていた。いずれも犯行は真夜中で目撃者などいない。

殺害直後には血文字で死体の所在を書いた匿名のメモが石をくるんだ状態で警察に投げ込まれ、それを機に毎回事件が発覚する。
警察がいくらパトロールをして張り込んでも犯人の影すら掴めなかった。

警察上層部は現場のあまりの惨状に市民の混乱を防ぐため、死体の状態や被害者の身辺関係、上層部だけが知るAKUMAの存在など、一部の詳細な情報を隠蔽して部下や世間には公表をしてきた。

ただ事件が起きているのは事実。

その異常な犯行からロンドンに出現した殺人鬼を真似、マンチェスターの切り裂きジャックと呼ばれる。

その切り裂きジャックが見付かっていないことだけで不安や恐怖を煽るのは十分だった。
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墮天の黒翼

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