周囲を二メートル程の石塀に囲まれた、それ程大きくは無い二階建ての石造りの真っ暗な家。
アレンとリンクは庭の茂みに身を隠す。
彼らから一番遠い位置、二十メートルくらいだろうか、一階の一室に明かりが灯る。ヘイゼルは一人暮らしだ。
半開きの厚手のカーテンの隙間から電話をしている姿が見える。
こんな時間に電話をかける程の至急の要件でもあるのだろうか。あるとすれば、
「気付かれましたかね」
「どうだろう、こっちを見つけたような素振りは無かったけれど…。万が一のときはよろしく」
「分かっています」
アレンはイヤリング越しにとりあえず神田達にその可能性を伝えると、左手を構えておく。
その時、ヘイゼルのいる部屋で何かが瞬いた。
不審に思って目を凝らせば、窓に背を向けたヘイゼルが全身を使って何か拒絶を示している。
「っ…来た…ッ!」
アレンは先に茂みを飛び出し、リンクは無線を入れながら後を走る。
神の道化を発動させたアレンが窓を派手な音を立てて叩き割ると同時に、明かりに照らされたガラスが真っ赤に染まった。
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墮天の黒翼