「イギリス北部の街、マンチェスター周辺で教団が目を付けていたブローカー達が三日前から惨殺されている。
このような惨殺事件が二週間前から時々、各地で起きているんだ。
今回君達には犯人を特定、もしくは抵抗が出来ない状態になったと判断出来れば、サポーターの用意した場所まで連行してもらいたい」
司令室に集められたアレン・神田・ラビの三名は、フェイに渡された資料を片手にコムイの前に並び、監査官のリンクは扉の前に控えた状態で説明を受け始めた。
「三人もエクソシストを呼ぶからどんな内容か気になってはいたけどさ…、破壊をするなって聞こえんだけど…。それ依然に特定だけでもいいって、どういうことさ?」
「それに連行って…AKUMAに尋問をするってことですよね?」
うむ、といった風に頷くと、コムイは珈琲を一口含んで舌を潤した。両肘を突き、手を組むと、眼鏡の奥の瞳を鋭くする。
「まだ仮説なんだけど…、今回の犯人はAKUMAじゃない」
三人は揃って眉根を寄せた。AKUMAではないということはすなわち人間、ノアの可能性が高い。
「惨殺されたブローカー達の遺体は形がある。ウイルスの影響がなく、全員肉体は刃物で切り刻まれていた。
今回の任務はブローカーの情報を、犯人がどこで知るのかを突き止めるのが第一優先の目的なんだ」
難しい顔をした彼は、アレン達の手元にある資料を指差す。
「彼らの生前と遺体の両写真や解剖資料などは君達の持つ資料に詳細が添付してある。写真、特に遺体を見るのは自由、強制はしないよ」
見られたものではない、とでもいうことか。日々血を浴びるエクソシストに強いない程に。
視線を落としたアレン・ラビを余所に、今まで一言も話さなかった神田が口を開く。
「教団の情報漏洩問題の可能性が高いだろうな」
「…信じたくは、無いけれどね」
目を伏せたコムイは、願いを静かに零した。
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墮天の黒翼