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「あんたね!私と愛しいリーバー班長の恋を妨げた奴は!彼の前でレディをこんなにするなんて恋への冒涜よ!」
『そりゃどうも。お前がストーキングをしなければ私が出てくることは無い』
「まぁ失礼ね!ストーキングじゃなくて愛のアプローチなんだから!」
『どう考えても自分の職務を放ってアイツを攫おうとしていたようにしか思えないんだが』
「攫うだなんて人聞きの悪い!私に会いに来てくれた彼を丁重にもてなしてあげようと、」
『お前、ストーカーとみなされる条件は知っているか?被害者がつきまとい、待ち伏せし、不快感や恐怖感などを感じる行為を執拗にしてくる存在だと判断した場合は、たとえ自分にその気が無くてもストーカーと判断されるんだ』
「誰がそう判断したのよ!」
『リーバーに決まっているだろうが』

イノセンスの力で正座を強制させられた泥まみれの大男に、それを呆れ顔で見下ろす新藤。
開店前のバーを借りて繰り広げられる光景は異様且つ滑稽だ。

新藤の蹴りを顔面で受け止めて吹っ飛んだのは探索部隊のボネールだった。
かなりの勢いで突っ込んできたために反動が凄まじかったらしい。シャーベット状でびしゃびしゃな地面にも関わらず、うつ伏せで身動き一つしないまま伸びた奴を見て呆然と立ち尽くしていた俺達だったが、リーバーが盛大な溜息とともに「助かった…」と零したことで漸く状況が飲み込めた。
新藤はAKUMAだけでなく、この変人専門の護衛も兼ねていたのだ。教団にはラビやマリなどが恐らくいたのだろうが、コイツの性癖からして役に立たないだろう(男を可愛いと思って言い寄るような奴だし、)(思い出しただけで鳥肌が立つ)。リナリーは話を聞くことには長けているが、さっきの勢いで突っ込まれてしまっては止められなかっただろう。鴉に護衛をさせていれば綺麗に“掃除”されるか、放置されてリーバーが“されるがまま”になっていたと容易に予想が出来る。(いっそのこと“掃除”された方が安穏な生活に戻れるんじゃないかと思う。)消去法で必然的に頼れるのは新藤くらいしか残らない。当人はその期待通り撃退してくれたというわけだ。

「丁度この街の担当にアイツが就いたってジョニーが教えてくれてな。可能性は低いだろうとは思っていたんだが…、どうしても、その…、」
「うん、言わなくていいですよ。リーバーさんのその顔を見たら嫌でも察してあげられます」
「いや、本当に助かった…」
「素敵な人に気に入られましたね、お疲れ様です」
「なんか楽しんでないか?」
「とんでもない」
「そんな笑顔で言っても説得力無いぞ」

迎えの探索部隊が来るまでの間、新藤達から少し離れたカウンターで心労を隠せずにいるリーバーの愚痴を聞いていれば、確かに彼女の言っていた通り不憫に思えてきた。不憫に思うだけで協力とかはしてやらないけれど。

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