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無理矢理昼食を押し込んでリハビリを終えると、病室の隣にある風呂場で入浴を済ませた。
多少ふらつきながら髪を乾かしてベッドに戻るが、ピークを越えたのか今回はまだ睡魔に引きずられる感覚が来ない。

リクライニングベッドを起こしたまま、サイドテーブルと椅子に積まれた本に溜息を送る。暇つぶしにと先程コムイが置いていったものだ。

いつもなら、迷い無く手を伸ばしている。
そうさせないのは、心に過ぎる神田の背中。

コムイだけならまだしも、彼にまで伝えられるとは思ってもみなかった。
それほどバクに仕込んでいた楔の力が弱まっていたということ。コムイだけでなくバクの分もきちんと力を上乗せしておけばよかったと、今更ながら後悔する。
でも、もう遅い。

今度彼に会うときが、最後、だ。
ずっと前から決めていた。覚悟は、ある。

「俺はお前が、好きだ」

『っ…』

嬉しかった。
好き、と言われて初めて、自分の気持ちを知った。
私はただ神田に彼自身の願いを叶えて欲しいと望んでいただけのはずなのに。

脳裏に過ぎる真っ直ぐな言葉。今この耳元で囁かれたかと思えるほど、はっきりと声が聞こえる。
私の居場所を、彼の中に作らせてしまった。何故気付かなかったのだろう。
いや、甘えていたのだ。縋っていたのだ。私が本当に覚悟を決めていなかったから。

失う苦しみを知っている彼に、またその思いをさせようなんて。


そのとき、小さくガチャッと音をたてて病室の扉が開いた。
てっきりバクが訪ねてきたのかと思い、油断していた。

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