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「おいコムイッあれはどういうことだ!新藤に何があった!?」
「何も無いよ」
「あんな血塗れで何も無いだと?馬鹿にするのも大概にしろ!」

洗面所へと続く扉を開けるとすぐに鼻をついた鉄の臭いと視界に入った真っ赤に染まった本来純白であるはずのシンク。その“赤”が血液と判るまで時間はかからなかった。
次に視界に入ったのが力無く壁に背を預けて座わりこんでいる月精の姿。俯き下ろされた長髪で顔は窺えないが、白のインナーに胸元から腹部にかけて鮮血の帯が引かれていた。
生きていることは浅く不規則に上下する胸で確認できる程度。そして彼女の右の掌はべったりと血で濡れていて。
いやに大きく脈打つ自分の心臓の音を聞きながら急いで膝を折って呼びかけ、彼女の肩を揺すればズルズルと俺の方へと体が崩れた。
信じられなかった。
新藤のインナーを赤に染める血液は彼女の口、喉の中央から溢れた。喉にはある物を中心として鎖骨からエラ骨の範囲にかけ、血管のようなものが浮き出ていて、それは不規則な彼女の呼吸とは全く別の正確なリズムを刻みながら、まるで別の生き物のように不気味に脈打っていた。
だが何より我が目を疑ったのは、つぅっと血を滴らせた
イノセンスだった。

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