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「街に異変が起こったことに関係しそうなこと、心当たりは有りませんか?」 ベッドの上に横たわる枯れ枝のような体の老人になるべく優しく問いかける。 そう心掛けなければ、月精に対しての仕打ちに煮えるマグマが流れ出してしまいそうだから。 精神安定剤を投与された彼、ゲイル氏は白い天井に向けていた不確かな視線を人が変わったかのようにギラつかせ、此方を睨みつける。 「心当たりなどではない、確信だ。この街の人間が生け贄を差し出すのを拒んだ。やっとそれを供え、儀式も行おうとしたが、それが逃げた。神がお怒りになるのは必然のこと」 『その生け贄は誰だ』 反射の如く問うた月精に、僕は何故か僅かに違和感を感じた。 「知って何になる」 『捜すだけだ』 彼女と視線が交わることは無かった。 |
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