※この話の続き。 言ってしまうと私は可愛い。どれぐらい可愛いかっていうと、可愛いって噂が流れて学校で一番か二番かぐらいに可愛い、ってぐらい。 私は可愛い、本当に。 そんな私はちょっと前にある男の子に興味が出た。いや好きとかじゃなくて興味ね、興味。単純に少しばかり興味が湧いたんだよね、それだけ、本当にそれだけ。 そんで…まあ、その男の子、黒子テツヤ君がバスケ部で、試合があるって聞いて、色々ゴタゴタあったのち観にきたのだけど…… 「……」 「どうでしたか?」 「見てたし、見つけたけど…」 「いまいち、よくわかりませんでしたか?」 「うっ…」 だ、だって、バスケットボールなんて授業やったぐらいでまともに見たことすらない。あと黒子君なんかカゲ薄いからすぐ見失っちゃうんだもん。対戦相手も何事だってタジタジだったじゃん!どういう事なの!黒子君のカラダってどうなってんの!? 「…透明人間みたい」 「別に消えてるわけではありませんよ、まあ、カゲは薄い方ですが」 なんで黒子君は…わざわざ、あんな戦い方をするんだろう。 普通ならもっと、もっと、キラキラ輝くような……もっと、目立つ、そんな戦いをするだろう、なのに黒子君は一度たりとも自分でゴールを決めない。 まるで本物のカゲみたいだ。 「変わってるね、黒子君は」 「それが僕の戦い方です」 「…そっか」 「でも良かったです。田中さんに見てもらえて」 「…うぐ…」 んーん…!どうしてこういう事をサラッと言っちゃうのかなあ、黒子君は!! …あ、いやまあ、好きなんかじゃないけれど…ただ、こういうちょっとばかり、恥ずかしい事をサラッて言えるなんて、凄いなあと思ったりしただけ。好きなんかではないよ、うん。 というか、そもそも黒子君は、私が好きかどうかすらわからないのだ。 現在この状況で、全く好きじゃないとか言われたらなかなかクるものがあるけど…本当に、一切好きじゃない事も普通にあり得る。まずはそこから解明するべきだろう。 「黒子君ってさあ、好きな女の子いるの?」 「いませんけど気になる人はいます」 「……」 は、はぐらかしたああ!!なんて人!まさかこの状況ではぐらかすなんて!!食えない、食えないよ黒子君!! …いや、落ち着きなさい、田中星子。私は可愛い田中星子。今まで落とした男も告白された事も星の数!今さらこんなカゲが薄い男の子一人に、翻弄されるなんてあり得ない。絶対に!! 「どうかしましたか?」 「!!い、いや、ぜんぜん!」 「全然?」 「…なんにも!!」 あり得ない、絶対に! 「でも、影薄くてもそのうち私慣れちゃうんだからね」 「慣れちゃう、ですか」 そう、こうしていちいち意味深な言葉なんかに振り回されないの!落ち着き取り戻して簡単に黒子君を見つけて、今までの男の子みたいに落としちゃうんだから!! 今まで落とした男の子とおんなじ、全部まとめて、黒子君に慣れて、おんなじにしちゃえば。 きっとあっさりこんなモヤモヤもドキドキもグチャグチャも、消えちゃうんだから。 早く、落とさないと。 「…僕はまだ、見つかりたくありませんね」 「…へ?」 「まだ、見つかりたくはないです」 私の目の前に、黒子君がいた、ずっとそこにいたってわかっていたのに、まるで今現れたみたいで。 「そろそろ時間じゃないの?」 とか 「そろそろチームで集まらなきゃ」 とか 「そろそろ次の試合がはじまるよ」 とか 「そろそろ戻らないと」 とか、出てくる言葉はたくさんなのに。 「まだ、見つかりたく、ないです」 すかりと消える黒子君は酷い、また消えちゃうなんでずるい。私はこんなに必死で見つけようとしてるのに、透明なんかにならないでよ!!!! 「じゃあ、私が捕まえとく!!」 「……」 「だったら、黒子君は見えたままなんだから」 透明人間は今日もずるかった。心まで見えなくして私を困らす。 くすりと微笑んで消えちゃうのもずるかった。 だから私は考えた。透明人間をこの目でしっかりとみるために。 「…もし、この手を離さないでいてくれるのなら、見つかったままでもいいです、ね」 神様、私は彼をその他大勢に入れる事ができますか? 「ニュートンの発明だって、 恋心が芽生えちゃうのだって、 大体偶然。」 確かお姉ちゃんがそんな事を彼氏にフラレた日に駄弁っていたなあ、と思う。 …そういえば、忘れてた、黒子君部活試合じゃないの?「今日は試合が終わってミーティングが終われば各自解散なんです」なら早くいってよ。「送っていきますよ?」やめてよ、恥ずかしいなあ。 |