絶世の美少女サマ、ってのはあまりいない。
でも学年で三本指に入る可愛い女の子、ってのは少なからずいるものだ。

私、田中星子は可愛い、そりゃあもう本当に可愛い。というか、世の中に可愛い事を理解していない美少女なんていないと思う。
皆可愛ければ「ブスとは違うのよ」って気分にもなるじゃないですか?無自覚?天然?あーあんまり笑わせないで欲しい。


「まじ田中うざいわ」
「みーちゃんの彼氏もとったらしいじゃん?どんだけビッチなんだよってさぁ」


ぐちぐち、ぐちぐち、マスカラを塗りたくったクラスメイトがトイレの鏡で口紅も塗りたくる。揚げ物食べた?テッカテカだよ、テッカテカ。
そして、ボキャブラリーの少ない彼女達は「うざい」「ビッチ」をあと三回ぐらいいってトイレからでていった。


「ふ…」


うざいビッチで人を彼氏を寝取る最低女田中星子、なるほどね、なるほどなるほど。私が誰か知らない対して顔もよくない凡人彼氏を奪うと、なるほどなるほどなるほどなるほど。


「…ふ、ふふ…ふひゃははははははは!!あっーははははははは!!!!かーたーはーらーいーたーいぃー!!あははははは!!」


私は運動がめちゃくちゃできるわけじゃない、頭がめちゃくちゃいいわけじゃないし歌が上手いとか絵が上手いとかそういう特技すらない。
だけど、別にいい、特技なんて。要は人に気に入られるようにすればいい。
話を聞く時は目を見て優しく、些細な普段の動作から気を配ればいいだけの話。

そんな簡単な事が理解出来ないなんてなんてブザマ!!
スカートなんて短すぎない膝頭がみえるぐらいがちょうどいいし、リボンもちゃんと結んだ方が絶対に可愛い、ニーソックスでも可愛いけど私はハイソックス派。
化粧も塗りたくらなくていい。リップグロスは全体的薄く、ああ、でも中心に少し多めにね。マスカラは先まで丁寧に、あくまでもナチュラルに、繊細に…

きっとわきまえてる女の子に、私に落とせない男の子なんていない。


「田中さん」
「………うひゃああああ!?」
「あ、驚かせてすみません、国語ノートの提出今日までなんです」
「え、あ、ああ、そうなの、ありがとう…」


び、びっくりしたあ……な、なによいきなり、というか誰?というか同じクラス?というかいた!?
やばい、聞いた事も見た事もない様な気がする…あんな奴みたことない、絶対に!!


「ね、ねえねえ!」
「はい?」
「ごめんね、えーっと……下の名前、なんだっけ?」
「テツヤです」
「そっか!うんありがとう!!」


絶対に!!


「……いた、黒子テツヤ……うっそお、まじで同じクラスじゃん…」


いや、確かに、今思えば話した事あるような、ないような…あーよくわかんない!!でも、やっぱり話した事ある気が、する…いや、ある!ある!!

だとしたらする事は一つ、黒子テツヤという人がどんな人か詳しく知るべし!!それ事が愛される秘訣、そして第一歩!!


「はい、ノート遅れてごめんね」
「大丈夫ですよ」


ふむ、顔は普通、身体も普通、成績上位ってわけでもないはず…ふ、普通だ、普通すぎるぞ、黒子テツヤ。


「黒子君ってなんで皆の分のノートを集めてるの?別に係とかじゃないんでしょ?」
「僕図書委員なんです、今日図書室にいくので、国語の先生にあうんですよ」
「……優しいね」


いやいや嘘じゃなくて本心で、クラス分のノートってなかなか重いでしょ…それを誰にも言われずに集めて提出なんて…損得で考えない人なのか、よし、一つ理解した。
それにしても話しる分は普通の人なのに…なんで今まで気がつかなかったんだろ。


「あ、そうだ部活はなにしてるの」
「バスケ部です」
「……え、ええええバスケ部!?バスケ部!?バスケ部って確かうち結構強いんじゃ…」
「…レギュラーです」
「うええええ!?」


どや、とでもいいたげな黒子君だがそんな事よりバスケ部レギュラーって事が衝撃的すぎる。見た目どうみても図書委員が似合う草食系男子だ。どうみても。
それがバスケ部レギュラー?確かうちのクラスの火神君もバスケ部だけどそれはわかる。でも黒子君は…なんどみても……


「…試合、見に行っていい?」


やばい、気になる。今日はじめて意識して喋ってるのにこんなに気になるとは思わなかった。
だって、今まで存在すらあやふやだったのに目立つバスケ部、さらにレギュラーなんて奇跡的すぎるだろう、絶対にみたい、どんな風にバスケするのか!!


「……多分、僕がいるだなんて、わからないと思います」
「………ん?」
「僕は、影なんです。溶け込んで、バレないようにする、それが僕のプレイスタイルだから」


だから、きっと田中さんは見つけられないですよ、…ってなにそれ、むかつく。


「…見つけられるよ、簡単だよ」
「無理です」
「な、なんで決めつけるのさ!わかるかもしれないじゃん!!」
「よっぽど意識しないと無理ですよ」
「っ、できる!」
「本当に、ずっと見てないと無理ですよ。僕が田中さんを意識するぐらい」


ノートありがとうございました。黒子君はノートを抱えて教室からでた。なにそれ、っていうかノート持てるんだ、男の子だ、ちゃんと、しっかり。


「…余裕で見つけられるし」


こんなに心臓はバクバクいってるんだ、きっと視線は黒子君を追っかける、馬鹿、見つけるなんて簡単なんだから。