「アンタって浮気するしか脳がないの?」


そういってやったらあいつはあたしの頬を思い切り殴り、ヒステリック叫んだ。


「お前がそんなんだから俺は!!」
「…いい年したおっさんが調子づいてんじゃねーよ、死ね」


あたしも負けじとあいつの腹に思い切り蹴りを入れて財布と携帯を持ち飛び出していった。

腐りきった夜の世界は人工的な光しかなく空は真っ黒に染め上げられていた。


「腐ってる」


「…三好さん」


高尾和成がはじめて声をかけてきたから少し驚いた。
張り付けました感が拭えない笑顔に苛つき、ばれないように奥歯を噛み締めて私も薄っぺらい笑顔を張り付けた。


「なあに和成君」


こいつ頭爆発して死ねばいいのにな。


「雫ちゃんになんで構うの」
「……」
「……別に誰にも言わないし…ていうか言った所で誰も信じねぇし止めたら?」
「ほんとあんたって雫ちゃん雫ちゃん気持ち悪い。死ね」


俺は彼女の理解者で彼女が大好きなんです。雫ちゃん大好き。だからこれ以上いじめないで、構わないで、触れてあげないで、ね?

とでもいいだしそうな顔をした高尾和成を殴りたい衝動を抑える。
そういえばこうして本性を見せるのははじめてか。あんまり苛ついたから我慢できなかった。


「…痛いとこつくなー…」
「で、あんた何がしたいの?大好きな雫ちゃんをどうしたいの?抱き締めたい?キスしたい?セックスしたい?どうしたいんだよ」
「全部あってるけど、全部違う」


気持ち悪い死ね。にこにこと笑顔を絶やさないそれにまた苛つく。


「俺雫ちゃんが大好きなんだよね。抱き締めたいしキスしたいしセックスもしたい。でもそれ以上に笑顔がみたい。あの無表情で汚れを知らない雫ちゃんが俺に笑いかけると想像するとどうしようもなく焦がれる」
「…あんた思ってた倍気持ち悪いわ」
「結構。俺雫ちゃんが大好きだからね………でもそれはお前も同じだろ」


ヒュッと思わず息を飲んだ。その言葉に私は苛立ちも嫌悪を覚えずただただどこかでバレたと思った。



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